2018年は,障害者雇用促進法にとって大きな改正があったにもかかわらず,この年に起きた障害者雇用の「水増し問題」の関係で,第31回国家試験には出題されませんでした。
しかし,さすがに第32回では,出題されてくるのではないでしょうか。
2018年の改正では,精神障害者が雇用義務化されたことで,障害者雇用率の算定基礎に精神障害者が加わり,雇用率が引き上げられています。
対象
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障害者雇用率
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国・地方公共団体,特殊法人(44人以上)
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2.5%
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都道府県等の教育委員会(50人以上)
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2.4%
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一般の民間企業(45.5人以上)
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2.2%
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障害者雇用率は,従来よりもそれぞれ0.2%ずつ引き上げられています。
しかし,正確に数値を覚える必要はありません。数年後には,もう一度引き上げられるからです。
数値を覚えるよりも,民間企業よりも国等の機関の方が高い障害者雇用率が設定されていることを覚えておくだけでよいと思います。
101人以上の従業員がいる民間企業には,障害者雇用納付金制度があります。
国等には適用されません。
障害者雇用納付金制度とは,障害者雇用率を達成できなかった企業が,不足した人数分を納付するものです。
納付金はペナルティなので,納付金を払ったからといって,雇用義務が免除されるわけではないことに注意しましょう。
障害者雇用の算定する際,1人の障害者であるにもかかわらず,
重度障害者の場合は,1人を2人と数える「ダブルカウント」
短時間労働の場合は,1人を0.5人と数える「ハーフカウント」
という仕組みがあります。
この部分は,本当は少し複雑ですが,ダブルカウントとハーフカウントという仕組みがあることが分かっていれば十分です。
もう一つ,特例子会社という制度もあります。
子会社やグループ企業で雇用した障害者をそのグループ全体の障害者雇用の算定に使える制度です。
企業の中には,障害者が従事しやすい仕事があるものがあります。
そういったところで,障害者を多く雇用して,グループ全体の雇用率にするのです。
生産性を重視する企業のコンセンサスを得るために,役人は様々な工夫をしたことがよく分かるような制度だと思いませんか?
それでは,今日の問題です。
第30回・問題143 障害者雇用率制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 2018年(平成30年)4月1日から,法定雇用率の算定基礎の対象に精神障害者が含まれることになっている。
2 重度身体障害者は,障害者雇用率の算定上,一人をもって三人とみなされる。
3 特例子会社とは,事業内容を勘案して障害者の雇用義務を課さないと認められた子会社のことである。
4 法定雇用率未達成の事業主は,利益率に応じて障害者雇用納付金を納付しなければならない。
5 国や地方公共団体には,一般の民間企業より低い法定雇用率が課せられている。
正解は,選択肢1です。
1 2018年(平成30年)4月1日から,法定雇用率の算定基礎の対象に精神障害者が含まれることになっている。
制度が変わる前からこのように出題したものの,実際に制度が変わったら,先述のように「水増し問題」が表面化したことで,第31回国試には出題できなかったのは皮肉なものです。
それでは,ほかの選択肢も確認します。
2 重度身体障害者は,障害者雇用率の算定上,一人をもって三人とみなされる。
トリプルカウントというものはありません。ダブルカウントです。
3 特例子会社とは,事業内容を勘案して障害者の雇用義務を課さないと認められた子会社のことである。
特例子会社とは,子会社やグループ企業で雇用した障害者をそのグループ全体の障害者雇用の算定に使える制度です。
4 法定雇用率未達成の事業主は,利益率に応じて障害者雇用納付金を納付しなければならない。
「利益率に応じて」ではなく,「不足人数分に応じて」が正解です。
5 国や地方公共団体には,一般の民間企業より低い法定雇用率が課せられている。
国等のほうが高い法定雇用率が課せられています。
<今日の一言>
障害者雇用率に関して,達成できなかった企業は,障害者雇用納付金を納付します。
その財源を使って,障害者雇用率を達成した企業には,障害者雇用調整金が給付されます。