今回も職場適応援助者(ジョブコーチ)を学んでいきます。
職場適応援助者(ジョブコーチ)は,障害者が職場に適応できるよう職場に出向き,一定期間継続的に支援するとともに,職場の上司や同僚等にも必要な助言等を行います。
それでは,今日の問題です。
第30回・問題145 職場適応援助者(ジョブコーチ)の役割に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 事業所に対し,支援対象者のために新規の事業を用意するよう要求する。
2 事業所に代わって,職場外で支援対象者の職業訓練を行う。
3 事業所の求人ニーズに合わせて,求職者をあっせんする。
4 支援当初は支援対象者と職場で一緒にいる時間を少なくし,徐々にその時間を増やしていく。
5 支援対象者が職場の同僚とコミュニケーションを図ることができるよう調整する。
この問題は,それほど簡単ではありません。
就労支援サービスは,最後の方の科目なので,疲れ切った中で解かなければならないからです。
国試の文字数は,おそらく第31回と同じくらいのボリュームになるはずです。
第30回は近年では最も文字数が少なかった国試です。第31回からは,ちょっと文字数を増やしました。
問題文が長くなるということは,考えることが必要な問題になるということです。
さて,この問題の正解は,選択肢5です。
5 支援対象者が職場の同僚とコミュニケーションを図ることができるよう調整する。
素直に問題を読めないと,何か裏があるのではないかと疑心暗鬼になります。
十二分に気をつけましょう。
それでは,ほかの選択肢も見てみましょう。
1 事業所に対し,支援対象者のために新規の事業を用意するよう要求する。
こんなことまではしません。
2 事業所に代わって,職場外で支援対象者の職業訓練を行う。
職業訓練は行いません。
解答テクニック的に言えば,「〇〇に変わって,〇〇する」といった出題は多くの場合,正解にはなりません。
3 事業所の求人ニーズに合わせて,求職者をあっせんする。
あっせんはしません。
4 支援当初は支援対象者と職場で一緒にいる時間を少なくし,徐々にその時間を増やしていく。
最初にかかわる時間を長くとり,徐々に短くしていきます。
<今日の一言>
重箱の隅をつつくような
という表現があります。
社会福祉士の国家試験は,重箱の隅をつつくような出題はありません。
もし,細かい出題がなされるなら,それはおそらく正解選択肢にはなり得ないと言えます。
国試では,素直に読んで,素直に答えた方が,最終的には良い結果に結びつくことが多いようです。
今日の問題が,ちょっと高度である理由は,考えさせる問題だからです。
これからもこういったタイプの問題は出題されます。
ワーカーは多くの場合,誰かの判断を仰ぎながら活動するタイプの職種ではありません。
だからこそこのようなタイプの問題を出題します。
重箱の隅をつつくような問題よりも何倍の意義のある国試問題になります。
果たして今年はどんな問題が出題されることでしょうか。
私たちは,どんな問題にも対応できるように,様々な情報を実際の問題を解きながら提供してきました。
ずっと読んできていただいた方には深く感謝いたします。解答テクニックも存分に活用して,問題に立ち向かいましょう!
チームfukufuku21メンバー一同
最新の記事
成年後見人の職務
成年後見人の職務は,身上監護と財産管理です。 法務省の資料によると,それぞれ以下のように説明しています。 身上監護とは,ご本人の生活や健康の維持,療養等に関する仕事です。例えば,ご本人の住まいの確保,生活環境の整備,施設に入所する契約,...
過去一週間でよく読まれている記事
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
システム理論は,「人と環境」を一体のものとしてとらえます。 それをさらにすすめたと言えるのが,「生活モデル」です。 エコロジカルアプローチを提唱したジャーメインとギッターマンが,エコロジカル(生態学)の視点をソーシャルワークに導入したものです。 生活モデルでは,クライエントの...
-
イギリスCOSを起源とするケースワークは,アメリカで発展していきます。 1920年代にペンシルバニア州のミルフォードで,様々な団体が集まり,ケースワークについて毎年会議を行いました。この会議は通称「ミルフォード会議」と呼ばれます。 1929年に,会議のまとめとして「ミルフ...
-
様々なアプローチが第31回国試までに出題された回数を整理すると以下のようになります。 アプローチ名 出題回数 ・心理社会的アプローチ 9 ・機能的アプローチ 4 ・問題解決アプローチ ...
-
ソーシャルワークは, ケースワーク グループワーク コミュニティワーク(コミュニティオーガニゼーション) とそれぞれの専門領域で発展していきました。 ソーシャルワークの統合化とは,それらのソーシャルワークとしての共通基盤を明確にすることを意味しています。 そのきっかけとなったのが...
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...
-
リッチモンドは,「人と環境」について ソーシャル・ケース・ワークは,「人と社会環境との間を個別に意識的に調整することを通して,パーソナリティを発達させる過程」である。 と述べています。 リッチモンドがこう述べたのは,1922年のことです。 しかしその後,「個」...
-
今回は,ソーシャルワークにおけるエンゲージメントを取り上げます。 第30回の国試で出題されるまでは,あまり知られていなかったものです。 エンゲージメントは,インテーク(受理面接)とほぼ同義語です。 それにもかかわらず,インテークのほかにエンゲージメントが使われるようになった理由は...