もう一度,整理してみましょう。
市町村が処理することが適当でないと認められるもの(もちろん,例外あり)
①専門的な判断が求められるもの
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②サービスの質の向上及び専門職に対する研修
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③事業者の指定。 など
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児童福祉では,児童の入所に関するものは,「①専門的な判断が求められるもの」に当たります。
児童にとって,施設入所は,家庭生活から引き離されてしまうことを意味します。
そのため,専門的な判断が求められます。
通所 → 市町村
入所 → 都道府県
というように役割が分かれていることをしっかり押さえましょう。
それでは,今日の問題です。
第24回・問題136 事例を読んで,市役所の相談担当者の対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを一つ選びなさい。
〔事 例〕
K君は3歳男児である。生後間もなくダウン症候群であることが分かった。今後,心臓の手術が必要になるかもしれないが,現在は毎日元気に生活しており,地域の療育グループにも母子で週3日定期的に通っている。母親は,経済的な事情もあり,出産前と同様にフルタイムでの就労を強く希望している。しかし,子どもの成長への影響などいくつかの問題が重なってどうしていいか分からなくなったため,市役所に相談に来所した。
1 全国的な業者団体に加盟しているベビーシッター会社の利用を勧めた。
2 従来どおり療育グループを週3日利用することを勧めた。
3 知的障害児施設への入所利用を勧めた。
4 保育所入所申請を勧めた。
5 幼稚園利用を勧めた。
具体的な相談窓口についての記述はありませんが,おそらく市役所というところから,福祉事務所の家庭児童相談室ではないかと思われます。
児童に関する専門的な相談機関は,児童相談所です。
しかし,児童相談所を設置するのは,都道府県,指定都市,中核市,特別区(中核市及び特別区の設置は任意)です。
そのため,身近な相談場所として,設置されているのが「家庭児童相談室」です。
一般的な市民にとって,児童相談所は遠すぎるです。
福祉事務所は,市役所の中に設置されていることが多いので,何か別の用で来所した際に相談してみようという人のニーズに対応しやすいと言えます。
さて,問題に戻ります。
まず,大前提として,市町村は通所,都道府県は入所にかかわります。
相談内容にかかわらず,市町村の役割ではないものは,選択肢3です。
3 知的障害児施設への入所利用を勧めた。
現在は,児童福祉法の改正により,障害種別はなくなり,「障害児通所支援」と「障害児入所支援」に再編されています。
いずれにせよ,障害児の入所は,市町村が判断するものではありません。
児童福祉施設が必要と認める場合には,その児童を児童相談所に送致します。
そして,児童相談所が判断して,都道府県知事が入所の措置を行います。
さて,この問題の正解は,選択肢4です。
4 保育所入所申請を勧めた。
通所は,市町村の役割です。
そして,何より,フルタイムでの就労を望んでいるので,保育所を利用するのは,最も適切だと考えられます。
それでは,ほかの選択肢も見てみましょう。
1 全国的な業者団体に加盟しているベビーシッター会社の利用を勧めた。
ベビーシッターを利用することで,フルタイムで就労することは可能です。
しかし,経済的な事情がある中,ベビーシッターを利用して就労するのは,適切だとは言えません。
2 従来どおり療育グループを週3日利用することを勧めた。
従来どおりであれば,何の問題の解決になりません。
5 幼稚園利用を勧めた。
パートタイムでの就労なら,幼稚園利用もあるかと思います。
しかし,フルタイムによる就労を希望しているので,幼稚園利用は適切ではないでしょう。
<今日の一言>
事例問題では「最も適切なもの」を選ぶ問題には,注意が必要です。
今日の問題では,それほど迷うことはないと思いますが,選択肢1の「ベビーシッター」も決して間違ったアドバイスでありません。
しかし,最も適切かと言えば,そうではありません。
「最も適切なもの」を選ぶ問題の中には,いずれも不適切ではないという問題もあります。
一回答えを決めても「本当にそれが最も適切なのか」といった批判的な視点でもう一度問題を読み直してみると,「もっと適切なものがあった」と気づくこともあります。
こういったことの積み重ねが,合否につながる1点を生み出すことになります。