2020年1月15日水曜日

労働法規の徹底理解~労働施策総合推進法

労働法規とは,特定の法制度を指すものではなく,労働者の保護などを目的とした法制度の全体を指したものです。

今回は,そのうちの「労働施策総合推進法」(正式名称:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)を学びましょう。

この法律は,雇用対策法が,2018年に改正されて,名称が変更になっています。

この法律の目的は,国が,少子高齢化による人口構造の変化等の経済社会情勢の変化に対応するためのものです。

労働施策総合推進法が規定する国の施策
①労働と生活との調和
②能力に適合する職業に就くことのあっせん
③職業訓練及び職業能力検定に関する施策を充実
④就職困難者の就職の促進,労働力の需給の不均衡の是正。
⑤事業規模の縮小等に伴う失業予防,及び離職を余儀なくされる労働者の円滑な再就職を促進するための施策の充実。
⑥女性の職業及び子の養育又は家族介護者の雇用の継続,円滑な再就職の促進,母子家庭の母及び父子家庭の父並びに寡婦の雇用の促進。
⑦青少年の雇用管理の改善の促進,実践的な職業能力の開発及び向上の促進。
⑧高年齢者の定年の引上げ,継続雇用制度の導入等の円滑な実施の促進,再就職の促進,多様な就業機会の確保その他の高年齢者がその年齢にかかわりなくその意欲及び能力に応じて就業することができるようにするために必要な施策。
⑨疾病,負傷その他の理由により治療を受ける者の職業の安定を図るため,雇用の継続,離職を余儀なくされる労働者の円滑な再就職の促進。
⑩障害者の雇用の促進,職業リハビリテーションの推進。
⑪雇用形態及び就業形態の改善等の促進。
⑫高度の専門的な知識又は技術を有する外国人の我が国における就業の促進。
⑬地域的な雇用構造の改善を図るため,雇用機会が不足している地域における労働者の雇用の促進。
⑭職業の安定,労働力の確保等に資する雇用管理の改善の促進。

14の施策のうち,以下が新しく加わっています。

⑨疾病,負傷その他の理由により治療を受ける者の職業の安定を図るため,雇用の継続,離職を余儀なくされる労働者の円滑な再就職の促進。

AYA(アヤ)世代(思春期と若年成人)の「がん」が話題になっています。がんの早期発見により,がんの治療をしながら仕事を継続する人が増加している中,加えられたものでしょう。

それでは,今日の問題です。

第26回・問題144 労働法規における施策の対象者に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 雇用対策法では,外国人は含まれない。

2 職業安定法では,未成年者は含まれない。

3 職業能力開発促進法では,障害者は含まれない。

4 「求職者支援法」では,雇用保険の基本手当を受給している者は含まれない。

5 「障害者雇用促進法」では,知的障害者は含まれない。

正解は,選択肢4です。

4 「求職者支援法」では,雇用保険の基本手当を受給している者は含まれない。

前回学んだように,求職者支援法は,雇用保険を補完するための法制度です。

「求職者支援法」の対象は,雇用保険の受給資格のない者です。

それでは,ほかの選択肢も確認してみましょう。


1 雇用対策法では,外国人は含まれない。

雇用対策法は,現在は「労働施策総合推進法」と改称されていますが,外国人も対象としています。


2 職業安定法では,未成年者は含まれない。

職業安定法は,公共職業安定所を規定している法律です。
未成年も対象とします。


3 職業能力開発促進法では,障害者は含まれない。

職業能力開発促進法は,職業能力開発短期大学校,職業能力開発大学校,職業能力開発促進センター,障害者職業能力開発校を規定しています。

障害者職業能力開発校
職業能力開発短期大学校,職業能力開発大学校,職業能力開発促進センターで職業訓練を受けることが困難な身体又は精神に障害がある者等に対して行うその能力に適応した普通職業訓練又は高度職業訓練を行うための施設。


5 「障害者雇用促進法」では,知的障害者は含まれない。

障害者雇用促進法は,三障害(身体・知的・精神)を対象としています。


<今日の一言>

労働施策総合推進法は,2019(令和元)年にも改正されています。

この改正のポイントは,「パワーハラスメント(パワハラ)対策の法制化」です。
施行は,大企業は2020年,中小企業は2022年です。

現在の国家試験は,1科目の出題数が少ないので,新しいことをすぐ出題するほどの余裕がないためか,制度が変わったものがすぐ出題されることはほとんどない傾向にあります。

焦って調べるほどのことはありません。

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