2020年1月8日水曜日

児童虐待防止法の徹底理解~虐待の早期発見の努力義務

今回から数回にわたり,児童虐待防止法を学んでいきましょう。

児童虐待防止法(正式名称:児童虐待の防止等に関する法律)は,虐待三法の中では最も早い2000(平成12)年に成立しています。

児童虐待防止法の諸規定
児童虐待の定義
保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するもの)からの虐待。
虐待の種類
身体的虐待,性的虐待,ネグレクト(養育の怠慢・拒否),心理的虐待。
児童虐待の早期発見等
学校、児童福祉施設、病院その他児童の福祉に業務上関係のある団体及び学校の教職員、児童福祉施設の職員、医師、歯科医師、保健師、助産師、看護師、弁護士その他児童の福祉に職務上関係のある者は、児童虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、児童虐待の早期発見に努めなければならない。
児童虐待に係る通告
児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。
通告又は送致を受けた
場合の措置
市町村又は福祉事務所の長は,必要に応じ近隣住民、学校の教職員、児童福祉施設の職員その他の者の協力を得つつ、当該児童との面会その他の当児童の安全の確認を行うための措置を講ずる。
出頭要求等
都道府県知事は、児童虐待が行われているおそれがあると認めるときは、当該児童の保護者に対し、当該児童を同伴して出頭することを求め、児童委員又は児童の福祉に関する事務に従事する職員に必要な調査又は質問をさせることができる。
立入調査等
都道府県知事は、児童虐待が行われているおそれがあると認めるときは、児童委員又は児童の福祉に関する事務に従事する職員に,児童の住所又は居所に立ち入り、必要な調査又は質問をさせることができる。
再出頭要求等
都道府県知事は、児童の保護者が正当な理由なく同項の規定による児童委員又は児童の福祉に関する事務に従事する職員の立入り又は調査を拒み、妨げ、又は忌避した場合、児童虐待が行われているおそれがあると認めるときは、当該保護者に対し、当該児童を同伴して出頭することを求め、児童委員又は児童の福祉に関する事務に従事する職員をして、必要な調査又は質問をさせることができる。
臨検、捜索等
都道府県知事は、児童の保護者が正当な理由なく同項の規定による児童委員又は児童の福祉に関する事務に従事する職員の立入り又は調査を拒み、妨げ、又は忌避した場合、児童虐待が行われている疑いがあるときは、当該児童の安全の確認を行い、又はその安全を確保するため、児童の福祉に関する事務に従事する職員に、地方裁判所、家庭裁判所又は簡易裁判所の許可状によって,当該児童の住所若しくは居所に臨検,又は当該児童を捜索させることができる。
警察署長に対する
援助要請等
児童相談所長は、児童の安全の確認,又は一時保護を行う場合、これらの職務の執行に際し必要があると認めるときは、警察署長に対し援助を求めることができる。
都道府県知事は、立入り及び調査、又は臨検等を行う場合,これらの職務の執行に際し必要があると認めるときは、警察署長に対し援助を求めることができる。
児童相談所長又は都道府県知事は、児童の安全の確認及び安全の確保に万全を期する観点から、必要に応じ迅速かつ適切に警察署長に対し援助を求めなければならない。
面会等の制限等
一時保護,施設入所が行われた場合,当該児童との面会,当該児童との通信の全部あるいは一部を制限することができる。


児童虐待防止法は,保護者からの虐待を虐待の定義としています。

同法で,保護者からの虐待に限定しているのは,児童福祉法で,被措置児童等虐待が規定されているからです。

それでは,今日の問題です。


第28回・問題139 児童虐待の防止等に関する法律に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 学校の教職員,児童福祉施設の職員,医師,保健師,弁護士その他児童の福祉に職務上関係のある者には,児童虐待の早期発見の努力義務が課せられている。

2 偶然通りかかった見知らぬ男性が,児童に対して暴力を振るってケガをさせる行為は,児童虐待に当たる。

3 児童相談所長は,児童虐待を受けた児童の意に反して,一時保護を行うことはできない。

4 児童虐待を行った保護者が,接近禁止命令に違反しても,罰則を科せられることはない。

5 児童虐待を疑った医師が,児童虐待の通告をする場合には,当該児童の保護者の同意を得るものとされている。


この問題の正解は,選択肢1です。

1 学校の教職員,児童福祉施設の職員,医師,保健師,弁護士その他児童の福祉に職務上関係のある者には,児童虐待の早期発見の努力義務が課せられている。

努力義務規定ではありますが,この規定がある関係で,医療関係者などが児童虐待の発見をすることが多くあります。


それでは,ほかの選択肢も見てみましょう。


2 偶然通りかかった見知らぬ男性が,児童に対して暴力を振るってケガをさせる行為は,児童虐待に当たる。

児童虐待防止法が規定する虐待の定義は,保護者からの虐待です。
見知らぬ男性が暴力を振るってケガをさせる行為は虐待ではありません。


3 児童相談所長は,児童虐待を受けた児童の意に反して,一時保護を行うことはできない。

一時保護は,児童の意に反しても,必要であれば実施されます。


4 児童虐待を行った保護者が,接近禁止命令に違反しても,罰則を科せられることはない。

接近禁止命令違反には罰則があります。


5 児童虐待を疑った医師が,児童虐待の通告をする場合には,当該児童の保護者の同意を得るものとされている。

通告には,保護者の同意は必要ありません。
同意する必要があるわけがありません。


<今日の一言>


児童虐待防止法の罰則規定について


同法では,罰則規定があります。

立入調査拒否の場合 → 50万円以下の罰金
接近禁止命令違反の場合,1年以下の懲役,又は100万円以下の罰金

結構厳しいですね。

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