焦りや不安が高まってきているところでしょう。
学習部屋に訪れる数が飛躍的に増えているので,受験が近くなっていることを実感します。
たくさんのことを勉強してきた人は,特に焦りが高まります。
覚えていないところが出てくるからです。
そこで調べてみると,制度が変わっていることを知ることもあります。
さらに,新しいデータが発表されていることもあります。
しかし,近年の国家試験では,制度が新しくなったばかりのものがすぐ出題されたことはほとんどありません。
多くの法制度は,成立してから施行されるまでにタイムラグがあります。
そのため,重要な制度改正は,すでに参考書に載っています。
今は新しいことを覚える時期ではありません。
合格不合格を分けるのは,そういうものではありません。
今まで勉強していてもしっかり定着していないことで,その問題を正解できないことが合否を分ける1点になります。
国試直前になったからといって,勉強方法を変えることはありません。
今まで行ってきた勉強をひたすら繰り返すのみです。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題145 公共職業安定所(ハローワーク)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 求職者に対して,有料で職業紹介を行っている。
2 各市町村にその設置が義務づけられている。
3 雇用保険に関する業務を行っている。
4 障害者に対して,職業能力開発促進法に基づく公共職業訓練を行っている。
5 生活保護のうち,生業扶助の支給に関する事務を行っている。
ハローワークに関する出題は,ハローワークにさまざまな役割を担わせる傾向にあります。
それらに惑わされてはいけません。
落ち着いて,問題を読むことができれば,
3 雇用保険に関する業務を行っている。
に気づくことができるのではないでしょうか。これが正解です。
<今日の一言ぷらす>
今日の問題は,それほど難しくはないものかもしれません。
しかし,実際に正解するのは,それほど簡単ではありません。
理由はいくつかありますが,その中で着目したいのは,
2 各市町村にその設置が義務づけられている。
です。
「ハローワークがどこに設置されているのかを勉強しなかった」と思います。
義務があることは,きっちり勉強してきた人なら,どこかで見たことがあるはずです。
それにもかかわらず,知らないのは,それが嘘の内容であるからかもしれません。
地方に住んでいる人は,自分の市町村にはハローワークがないということ経験的に知っているかもしれません。
しかし,都市に住んでいると,ハローワークが身近にあるものであることが普通だと思うので,「もしかすると市町村に設置義務があるのかも」と思ってしまいます。
自分をムリに納得させることでしかその選択肢を選べないのなら,多くの場合,その選択肢は,正解ではないと思っても良いでしょう。
「〇〇しなければならない」というのも同様です。
今までの勉強の中で出てこなかった「〇〇しなければならない」は,ムリにつくったものである可能性があります。
嘘っぱち選択肢の例
地域福祉計画の策定に当たっては,要援護者への意見聴取をしなければならないと規定されている。
市町村は,地域福祉計画の策定において,福祉サービス利用者の意見聴取をしなければならない。
市民後見人による後見開始に当たり,被後見人は市民後見人と契約を締結しなければならない。
自立支援プログラムの支援対象者は,提供されるプログラムを「選択・決定」しなければならない。
「地方財政健全化法」に基づき財政健全化計画が定められた地方公共団体は,法律上設置が義務づけられていない公の施設を閉鎖しなければならないものとされている。
次世代育成支援対策推進法では,市町村行動計画の策定に当たって,市町村はあらかじめ,地方公共団体,住民,事業者等の意見を反映させるため,次世代育成支援対策地域協議会を設置しなければならないと定めている。
高額療養費の申請を受け付けた場合,受診した月から少なくとも1か月で支給しなければならない。
社会福祉士は,要介護者に福祉用具に関する助言を提供する場合,医師からの助言の下で実施しなければならない。
地方公共団体は,被保険者が住み慣れた地域で自立生活を営めるよう,その求めに応じて居住先を確保しなければならない。
|
思い当たるものをザっと並べてみました。
こういったものを目にすると「あれだけ勉強したのにわからない」という気持ちになります。
しかし,わかるはずがありません。それぞれについてそんな規定はないからです。
多くの人は,こういったものを目の当たりにすると焦ることでしょう。そして,勉強不足だったと思うでしょう。
しかし,それは勉強不足だからではありません。そんな規定はないのをムリにつくっている可能性があるのです。
あなたの努力は,あなたを裏切ることはないでしょう。
最後の最後は,「いかに自分を信用できるか」にかかっていると言えるのかもしれません。