2020年1月10日金曜日

児童虐待防止法の徹底理解~通告義務

今回も児童虐待防止法を学びましょう。

今回のテーマは,「通告義務」です。

児童虐待に係る通告
児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は,速やかに,これを市町村,都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村,都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。

重要なポイントは「児童虐待を受けたと思われる」というところです。
虐待を受けているかどうかの事実にかかわらず,虐待を受けていると思われた児童を発見した場合には,通告しなければなりません。

虐待の事実があったかどうか,の事実確認よりも,通告義務が優先されます。

それでは,今日の問題です。

第31回・問題137 Ⅹ保育園に転園して間もないGちゃん(5歳)は,父親が迎えに来るとおびえた表情をする。母親の顔にはあざができていることもあった。今朝,Gちゃんを送ってきた母親の顔は腫れており,保育士が声を掛けると避けて,すぐに帰ってしまった。お昼寝の時間になり,Gちゃんは保育士の耳元で,昨夜,父親が母親を激しく殴ったことを打ち明けた。Gちゃんが寝た後,保育士はこのことを園長に報告した。
 次の記述のうち,保育所の初動対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 職員会議を開いて全職員にこのことを伝え,意見を聞いて対応を検討する。

2 園長から児童相談所に通告する。

3 母親が迎えに来たら,詳しい状況を聞くことにする。

4 Gちゃんの家庭の様子を,近隣に住んでいる他の園児の保護者に聞く。

5 父親と連絡を取り,Gちゃんの話を伝え,状況を尋ねる。


法制度にかかわる事例問題は,ソーシャルワーク系の事例問題とは異なります。

さて,この問題の正解は,選択肢2です。

2 園長から児童相談所に通告する。

児童虐待防止法には,通告義務があるからです。

そのほかの選択肢を確認してみましょう。

1 職員会議を開いて全職員にこのことを伝え,意見を聞いて対応を検討する。
3 母親が迎えに来たら,詳しい状況を聞くことにする。

これらは,必要かもしれませんが,それは次の段階です。


4 Gちゃんの家庭の様子を,近隣に住んでいる他の園児の保護者に聞く。
5 父親と連絡を取り,Gちゃんの話を伝え,状況を尋ねる。

これらは,極めて危険です。
保育園は警察ではありません。
父親の虐待がエスカレートする恐れがあります。


<今日の一言>


まずは「通告」(通報)!


今日の問題のような事例は,ただの事例問題ではなく,事例問題のスタイルを取っている法制度の知識を問う問題です。

高齢者虐待防止法も障害者虐待防止法も「通報義務」があります。
虐待を受けていると思われる場合は,虐待の事実はさておき,通報義務があることを忘れてはなりません。

虐待事例では,

まずは「通告」(通報)!

事実確認や職員指導は次の段階です。

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