今回は,家庭裁判所を取り上げます。
家庭裁判所の役割は,多岐にわたるのでまとめ切れません。
前説なしで,問題を見てみましょう。
第28回・問題81 家庭裁判所の役割に関する記述として,正しいものを1つ選びなさい。
1 成年後見人に不正な行為,著しい不行跡などの事実がある場合,家庭裁判所は,職権で成年後見人を解任できる。
2 成年後見人の業務に疑義があることを理由に,家庭裁判所が直接,成年被後見人の財産状況を調査することはできない。
3 成年後見人は,正当な事由がある場合,家庭裁判所への届出をもって,その任務を辞することができる。
4 成年後見人が成年被後見人を養子にする場合,家庭裁判所の許可は不要である。
5 成年後見人が成年被後見人の居住用不動産を売却する場合,家庭裁判所の許可は不要である。
この問題をより確実に正解するためには,成年後見人等の選任を理解しておきたいです。
後見開始等の審判は,請求権者(本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人,検察官)の請求によって,家庭裁判所が行います。
その際,家庭裁判所は,職権で成年後見人等を選任します。
職権とは,その職に認められた権限という意味です。
この場合の職権とは,家庭裁判所の権限で成年後見人等を選ぶという意味となります。
任意後見制度と法定後見制度が決定的に異なる点は,任意後見制度は,自分の好きな人に後見人になってもらうのに対し,法定後見制度は,成年後見人等になってもらいたい人の候補を提出して審判が開始されたとしても,必ずしもその人を選任するものではないことです。
家庭裁判所の権限で,最も成年後見人等にふさわしい人を選ぶのです。
そのため,成年後見人等が職を辞したいと思った場合は,勝手に辞めることはできず,家庭裁判所の許可が必要となります。
また,成年後見人等が,不正やよくない態度や行い(不行跡)があった場合,家庭裁判所は職権をもって成年後見人等を解任することができます。
職権で選任しているので,職権で解任することができます。
そのような関係は,事業所の指定の取消しを行えるのは,事業所の指定を行った行政庁であることに似ています。これも合わせて覚えておきたいです。
それでは,解説です。
1 成年後見人に不正な行為,著しい不行跡などの事実がある場合,家庭裁判所は,職権で成年後見人を解任できる。
これが正解です。成年後見人等は,家庭裁判所が職権で選任するので,解任も職権で行うことができます。
2 成年後見人の業務に疑義があることを理由に,家庭裁判所が直接,成年被後見人の財産状況を調査することはできない。
後見監督人又は家庭裁判所は,いつでも後見の事務,もしくは被後見人の財産の状況を調査することができます。
3 成年後見人は,正当な事由がある場合,家庭裁判所への届出をもって,その任務を辞することができる。
成年後見人等が辞めることができるは,正当な事由がある場合で,家庭裁判所が許可した場合です。
職権で選任されているわけですから,届け出のみで辞めさせてくれません。
4 成年後見人が成年被後見人を養子にする場合,家庭裁判所の許可は不要である。
成年後見人が成年被後見人を養子にする場合,家庭裁判所の許可が必要です。
もし本当に不要なら,この選択肢を出題する意味がありません。
不要なものや含まれないものを出題するよりも,必要なものや含まれるものを出題したほうが意味のあることだと思います。
5 成年後見人が成年被後見人の居住用不動産を売却する場合,家庭裁判所の許可は不要である。
これも選択肢4と同じです。
成年後見人が成年被後見人の居住用不動産を売却する場合,家庭裁判所の許可が必要です。
このほかに裁判所の許可が必要なものとしては,
信書の転送
死後事務 など
があります。