日本社会福祉士会の倫理綱領は,2005年に策定されたものです。
2014年IFSWによりグローバル定義が出されたことにより,改訂作業をすすめ,2020年に改訂されています。
この倫理綱領は,
日本ソーシャルワーカー協会
日本医療社会福祉協会
日本精神保健福祉士協会
日本社会福祉士会
が共有しています。
しかし,なぜなのか数年前の出題基準から,日本社会福祉士会の倫理綱領が削除されてしまっています。精神保健福祉士も日本精神保健福祉士協会の倫理綱領が削除されています。
だからと言って出題されないということはないので,変わったところだけでも最低限,押さえておきたいです。
原理(「価値と原則」から変更) 以下は追加された部分 Ⅳ(集団的責任) 社会福祉士は,集団の有する力と責任を認識し,人と環境の双方に働きかけて,互恵的な社会の実現に貢献する。 Ⅴ(多様性の尊重) 社会福祉士は,個人,家族,集団,地域社会に存在する多様性を認識し,それらを尊重する社会の実現をめざす。 Ⅵ(全人的存在) 社会福祉士は,すべての人々を生物的,心理的,社会的,文化的,スピリチュアルな側面からなる全人的な存在として認識する。 |
倫理基準(「利用者に対する倫理責任」から変更) 以下は追加された部分 5.(クライエントの自己決定の尊重) 社会福祉士は,クライエントの自己決定を尊重し,クライエントがその権利を十分に理解し,活用できるようにする。また,社会福祉士は,クライエントの自己決定が本人の生命や健康を大きく損ねる場合や,他者の権利を脅かすような場合は,人と環境の相互作用の視点からクライエントとそこに関係する人々相互のウェルビーイングの調和を図ることに努める。 12.(情報処理技術の適切な使用) 社会福祉士は,情報処理技術の利用がクライエントの権利を侵害する危険性があることを認識し,その適切な使用に努める。 |
それでは,今日の問題です。
第28回・問題91 日本社会福祉士会が定める「社会福祉士の行動規範」における専門職としての倫理責任に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。
1 専門職集団としてではなく,個人として責任ある行動をとらなければならない。
2 他の社会福祉士が非倫理的な行動をとった場合,関係機関などに対し,適切な行動をとるよう働きかけなければならない。
3 研修や自主勉強会等の機会を活かして,常に自己研讃に努めなければならない。
4 社会的信用を高めることよりも,専門職集団の利益を優先しなければならない。
5 調査研究の結果を公表する場合,調査者の利益を優先しなければならない。
注意したいのは,正解を2つ選ぶ問題であることです。
この中で,ちょっと引っ掛かるものとしては,
1 専門職集団としてではなく,個人として責任ある行動をとらなければならない。
があります。
しかし,これは社会福祉士の国試の作り方のくせで見た場合,ほぼ正解にはならないタイプです。
そこに気がつくことができれば,うっかりミスはかなり減らすことができるでしょう。
1 専門職集団としてではなく,個人として責任ある行動をとらなければならない。
アンダーラインの部分が余計です。専門職集団が関係するので,この選択肢がつくられます。
関係しないのであれば,単純に「1 個人として責任ある行動をとらなければならない」でよいはずです。
さて,正解は
2 他の社会福祉士が非倫理的な行動をとった場合関係機関などに対し適切な行動をとるよう働きかけなければならない。
3 研修や自主勉強会等の機会を活かして,常に自己研讃に努めなければならない。
選択肢1さえ消去できれば,それほどは難しくないでしょう。
4 社会的信用を高めることよりも,専門職集団の利益を優先しなければならない。
5 調査研究の結果を公表する場合,調査者の利益を優先しなければならない。
これらはあり得ません。
<今日の一言>
相談援助の基盤と専門職は,ソーシャルワーカーとしての「価値」「知識」を養うための極めて重要な科目です。
難しいと思わず,きっちり覚えていきたい科目です。