今回は,アクションリサーチを取り上げたいと思います。
リサーチは,Researchなので,研究のことですが,それではアクションリサーチとは何でしょうか。
このように,勉強しないと意味がわからないものは,国家試験の出題に向いています。
勉強した人とそうでない人の差が明確に表れるからです。難しい文章でけむに巻くようなものは,本来は適切ではありません。
アクションリサーチとは, ある社会的な問題を研究者(あるいは実践者)が当事者とともに変革・改善を目指す実践活動です。
調査方法には,「参与観察」がありますが,それよりも当事者へのかかわりは強いのが特徴です。
アクションリサーチのプロセスは,以下のようなものです。
1.計画 |
2.実践 |
3.観察 |
4.振り返り・評価 |
評価した結果,改善が見られない場合は,また計画を立てて実践していきます。
例えば,国家試験に向けた模擬試験の結果が良くなかったグループがあったとします。
国試に向けて,合格できる実力をつけていかなければなりません。
大学によっては,教員がサポートしてくれることもあるでしょう。
その際,学生に聞き取りなどを行い,なぜ得点できなかったのかを考えます。
その改善に向けた計画を立てます。
そして,実践,観察,振り返り・評価を行います。
その結果を評価し,問題があれば,また次の対策を立てます。
参与観察とは,まったく異なることがわかるでしょう。
なお,国試勉強は,勉強不足では話になりませんが,何時間以上勉強すれば合格できるのか,ということはありません。
ネットに書かれる「〇時間以上勉強すれば合格できる」「〇か月で合格できる」といった情報を鵜呑みにしてはなりません。
不適切な勉強は,どれだけの時間をかけても実力にならないからです。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題89 アクションリサーチに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 研究対象について,非参与的に観察し研究を行うものである。
2 質的調査が用いられ,質問紙調査のような量的調査は用いられない。
3 目的は,科学的な因果関係の検証である。
4 計画,実施,事実発見の循環が,基本プロセスとして提唱されている。
5 調査を通じて得られた知見を実践活動と結び付けてはならない。
この問題は,出題当時は極めて難しかったものです。
しかし,消去法で正解を導くことができます。
消去法で正解を導きだす問題は,実は結構多いです。
そのような問題は,一つでも消去できない選択肢があると正解できないので,難易度が上がるのです。
この問題の場合は,選択肢3です。
3 目的は,科学的な因果関係の検証である。
因果関係の検証に用いるのは,量的調査です。
アクションリサーチを含めて,質的調査の目的は,新たな発見をすることです。
量的調査の因果関係の検証とは,要因を変化させると結果はどのように変化するのか,ということを調べます。
例えば,たばこによる肺がんの罹患率があります。
たばこを吸うグループと吸わないグループを調べて,どちらが罹患率が高いのか,といった調査です。
この場合は,1回きりの調査,つまり横断調査では相関関係はわかっても因果関係まではわからないので,期間を開けて何度も調査を繰り返す縦断調査を行うことが必要です。
この問題の正解は,選択肢4です。
4 計画,実施,事実発見の循環が,基本プロセスとして提唱されている。
「事実発見」というところが,観察及び振り返り・評価にあたります。
今見てみると,なんてことはないものですが,アクションリサーチのプロセスがそれまでに出題されたことがありませんでした。
そのため,この選択肢をすぐ答えだとわかる人はまずいなかったと思われます。
選択肢3が消去できるか,が正解するための分かれ道となった問題です。
ここで,得られる教訓は,量的調査と質的調査の特徴をしっかりと押さえておくことの重要性です。
簡単にでもその違いを言えるようになっておくとよいですね。
一応,そのほかの選択肢も確認します。
1 研究対象について,非参与的に観察し研究を行うものである。
アクションリサーチは,参与しながら研究を行うのが特徴です。
一緒に勉強の改善法を考えてくれる先生はすてきだと思いませんか?
参与せずに観察するのは非参与観察であって,アクションリサーチではありません。
かかわり方の度合いは,先に述べたように,参与観察よりもアクションリサーチの方が強いです。
2 質的調査が用いられ,質問紙調査のような量的調査は用いられない。
インタビューなどの質的調査も行われますが,量的調査も行われます。
国試に向けた対策では,問題の洗い出しに,質問紙を使うこともあるでしょう。
具体的には,模擬試験の成績が良いグループと成績が悪かったグループの比較検討を行うことで,より具体的な改善策が見出すことができそうです。
5 調査を通じて得られた知見を実践活動と結び付けてはならない。
アクションリサーチは,実践活動そのものです。