2021年1月5日火曜日

医療ソーシャルワーカー業務指針

今回は,医療ソーシャルワーカー業務指針を学びたいと思います。

 

同業務指針は,当時の厚生労働省通知として平成元年に出されたものです。

平成14年に改正されて,現在にいたります。

 

医療ソーシャルワーカー業務指針の「業務の範囲」を見てみましょう。

 

<業務の範囲>

()療養中の心理的・社会的問題の解決,調整援助

()退院援助

()社会復帰援助

()受診・受療援助

()経済的問題の解決,調整援助

()地域活動

 

この中の「()受診・受療援助」です。

 

()受診・受療援助

入院,入院外を問わず,患者やその家族等に対する次のような受診,受療の援助を行う。

生活と傷病の状況に適切に対応した医療の受け方,病院・診療所の機能等の情報提供等を行うこと。

診断,治療を拒否するなど医師等の医療上の指導を受け入れない場合に,その理由となっている心理的・社会的問題について情報を収集し,問題の解決を援助すること。

診断,治療内容に関する不安がある場合に,患者,家族の心理的・社会的状況を踏まえて,その理解を援助すること。

心理的・社会的原因で症状の出る患者について情報を収集し,医師等へ提供するとともに,人間関係の調整,社会資源の活用等による問題の解決を援助すること。

入退院・入退所の判定に関する委員会が設けられている場合には,これに参加し,経済的,心理的・社会的観点から必要な情報の提供を行うこと。

その他診療に参考となる情報を収集し,医師,看護師等へ提供すること。

通所リハビリテーション等の支援,集団療法のためのアルコール依存症者の会等の育成,支援を行うこと。

 

「受診・受療援助」は,医療ソーシャルワーカーが医療職の代わりを行うようなものではなく,ソーシャルワーク技術を用いて,独自の援助を行うものです。

 

それでは,今日の問題です。

 

28回・問題75 救急医療の場面において,医療ソーシャルワーカーが医療ソーシャルワーカー業務指針にのっとって行う業務に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。

1 患者の身元が不明な場合には,警察に通報する義務がある。

2 患者が医療費の支払いに困窮している場合には,福祉,保険等関係諸制度を活用できるように援助する。

3 患者が医療上の指導を受け入れない場合には,その理由となっている心理的・社会的問題の解決に向けて援助を行う。

4 継続治療が必要な場合には,同一病院での入院を推奨する。

5 家族が混乱している場合には,治療内容を説明する。

 

この問題は,医療ソーシャルワーカー業務指針にのっとったものです。

同業務指針にのっとっていないものは,対応として適切であったとても,問題の正解にはなり得ません。

 

正解は,選択肢2と3です。

 

2 患者が医療費の支払いに困窮している場合には,福祉,保険等関係諸制度を活用できるように援助する。

 

これは,「経済的問題の解決,調整援助」にあたります。

 

3 患者が医療上の指導を受け入れない場合には,その理由となっている心理的・社会的問題の解決に向けて援助を行う。

 

これは,「療養中の心理的・社会的問題の解決,調整援助」にあたります。

 

ほかの選択肢も確認します。

 

1 患者の身元が不明な場合には,警察に通報する義務がある。

4 継続治療が必要な場合には,同一病院での入院を推奨する。

 

この2つは消去できるでしょう。

 

5 家族が混乱している場合には,治療内容を説明する。

 

この選択肢を正解だと思った人もいるのではないでしょうか。

 

家族が混乱している場合には,治療内容を説明するのは,一見すると「受診・受療援助」のように思うかもしれませんが,「受診・受療援助」にはあたりません。

 

「受診・受療援助」は,いつも引っ掛けで用いられますが,医療に関するものは医療職の役割です。確実に理解しておきましょう。

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