今回は,医療ソーシャルワーカー業務指針を学びたいと思います。
同業務指針は,当時の厚生労働省通知として平成元年に出されたものです。
平成14年に改正されて,現在にいたります。
医療ソーシャルワーカー業務指針の「業務の範囲」を見てみましょう。
<業務の範囲>
(1)療養中の心理的・社会的問題の解決,調整援助
(2)退院援助
(3)社会復帰援助
(4)受診・受療援助
(5)経済的問題の解決,調整援助
(6)地域活動
この中の「(4)受診・受療援助」です。
(4)受診・受療援助 入院,入院外を問わず,患者やその家族等に対する次のような受診,受療の援助を行う。 ①生活と傷病の状況に適切に対応した医療の受け方,病院・診療所の機能等の情報提供等を行うこと。 ②診断,治療を拒否するなど医師等の医療上の指導を受け入れない場合に,その理由となっている心理的・社会的問題について情報を収集し,問題の解決を援助すること。 ③診断,治療内容に関する不安がある場合に,患者,家族の心理的・社会的状況を踏まえて,その理解を援助すること。 ④心理的・社会的原因で症状の出る患者について情報を収集し,医師等へ提供するとともに,人間関係の調整,社会資源の活用等による問題の解決を援助すること。 ⑤入退院・入退所の判定に関する委員会が設けられている場合には,これに参加し,経済的,心理的・社会的観点から必要な情報の提供を行うこと。 ⑥その他診療に参考となる情報を収集し,医師,看護師等へ提供すること。 ⑦通所リハビリテーション等の支援,集団療法のためのアルコール依存症者の会等の育成,支援を行うこと。 |
「受診・受療援助」は,医療ソーシャルワーカーが医療職の代わりを行うようなものではなく,ソーシャルワーク技術を用いて,独自の援助を行うものです。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題75 救急医療の場面において,医療ソーシャルワーカーが医療ソーシャルワーカー業務指針にのっとって行う業務に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
1 患者の身元が不明な場合には,警察に通報する義務がある。
2 患者が医療費の支払いに困窮している場合には,福祉,保険等関係諸制度を活用できるように援助する。
3 患者が医療上の指導を受け入れない場合には,その理由となっている心理的・社会的問題の解決に向けて援助を行う。
4 継続治療が必要な場合には,同一病院での入院を推奨する。
5 家族が混乱している場合には,治療内容を説明する。
この問題は,医療ソーシャルワーカー業務指針にのっとったものです。
同業務指針にのっとっていないものは,対応として適切であったとても,問題の正解にはなり得ません。
正解は,選択肢2と3です。
2 患者が医療費の支払いに困窮している場合には,福祉,保険等関係諸制度を活用できるように援助する。
これは,「経済的問題の解決,調整援助」にあたります。
3 患者が医療上の指導を受け入れない場合には,その理由となっている心理的・社会的問題の解決に向けて援助を行う。
これは,「療養中の心理的・社会的問題の解決,調整援助」にあたります。
ほかの選択肢も確認します。
1 患者の身元が不明な場合には,警察に通報する義務がある。
4 継続治療が必要な場合には,同一病院での入院を推奨する。
この2つは消去できるでしょう。
5 家族が混乱している場合には,治療内容を説明する。
この選択肢を正解だと思った人もいるのではないでしょうか。
家族が混乱している場合には,治療内容を説明するのは,一見すると「受診・受療援助」のように思うかもしれませんが,「受診・受療援助」にはあたりません。
「受診・受療援助」は,いつも引っ掛けで用いられますが,医療に関するものは医療職の役割です。確実に理解しておきましょう。