「社会調査の基礎」は,難しいというイメージが先行している科目です。
しかし,難しいのは「量的調査」の一部です。
質的調査は,それほどの難易度があるものはありません。
覚えるべき内容は,
調査方法としての
観察法
面接法(インタビュー)
アクションリサーチ
質的データの分析としての
KJ法
グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)
ドキュメント分析(記録の分析)
これらを何となくでも説明できますか?
丸暗記は必要とされないので,おおよそのことが説明できれば,国試では何とかなります。
国試では,決して深い知識は問われません。
さて,今回は面接法,その中でもグループインタビューを取り上げます。
グループインタビューは,ソーシャルワークのグループワークと同じように,メンバーの相互作用を期待して実施されます。
もし,相互作用を期待しないのなら,個別インタビューでよいです。
グループインタビューは,グループインタビューの意味があります。
それでは,今日の問題でそれらを確認していきましょう。
第28回・問題88 グループインタビューに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 対象者の選定は,有意標本抽出によって行われる場合が多い。
2 参加者間の相互作用が起こらないように,司会者が気をつける。
3 記録係は,参加者の非言語的反応について記録をする必要はない。
4 一度に参加する人数は,多いほど良い。
5 質問は,参加者が明確に回答できるように選択式を基本とする。
この問題を作成した試験委員は,おそらくですが,問題86を作成した試験委員と同一人物だと思われます。
その理由は,選択肢4です。
4 一度に参加する人数は,多いほど良い。
当然これは間違いですが,この文章と似た出題が問題86にありました。
4 回答の形式として選択肢法を用いる場合,想定される選択肢を網羅するため選択肢の数が多いほど望ましい。
同じロジックですね。しかも「同じほど」という言い回しが共通です。
この問題を解説した時も同じことを書きましたが,こういったものは極端な例を考えます。
多いほどよいのですから,100名よりも200名,200名よりも1,000名,1,000名よりも10,000名のほうがよいことになります。
ばかなことを言うな,そんなことはできるわけないだろう,国試で引っ掛かるわけない。
と思う人は要注意です。普段しないミスが起きるのが国試です。
国試会場では,2人よりも4人のほうがよいだろうと思ってしまう恐れがあるのです。
そのために,極端な例で考えてみるのが良いのです。
結構重要ですよ。
それでは,そのほかの選択肢の解説です。
1 対象者の選定は,有意標本抽出によって行われる場合が多い。
これが正解です。
社会調査は,無作為抽出で行うのが適切ではないの?
と思う人は要注意です。
量的調査は,無作為抽出によって実施されます。
しかし,質的調査は,グループインタビューに限らず,ほとんどの場合は,有意抽出によって行われます。
量的調査が無作為抽出によって行われる理由は,全数調査を行わない場合,抽出する標本は,できるだけ母集団の性質に近くなるようにするためです。
質的調査は,母集団の性質を調べるために行うものではなく,調査を行うことで,新しい発見をするためです。
テーマに沿って,気になるAさん,Bさん,Cさんに参加してもらいます。これらは,無作為抽出しているわけではありません。
2 参加者間の相互作用が起こらないように,司会者が気をつける。
グループインタビューでは,参加者の相互作用に期待して行います。
相互作用を利用しないなら,個別インタビューでよいです。
複数の人に対して同時にインタビューできるから,グループで行うということではありません。
3 記録係は,参加者の非言語的反応について記録をする必要はない。
参加者の非言語的反応には,さまざまな情報が含まれています。
沈黙でさえも,重要な意味があります。
それを記録しないのは,適切とは言えないでしょう。
5 質問は,参加者が明確に回答できるように選択式を基本とする。
選択式の質問を用いることが多いのは,量的調査の場合です。
質的調査でも選択式の質問を使われることはあるかもしれませんが,メインとして用いられるのは,自由に答えられる質問です。