国試突破に必要な人名はほとんどありませんが,ソーシャルワークだけは別格です。
覚えるのが苦手なら,問題を解いて覚えるのが手っ取り早い方法です。
それでは今日の問題です。
第28回・問題93 ソーシャルワークの発展に寄与した代表的な研究者とその理論に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 リッチモンド(Richmond,M.)は,ケースワークの過程と対象として,個人に直接働きかける直接的活動と社会環境を通じて働きかける間接的活動を挙げた。
2 パールマン(Perlman,H.)は,診断主義と機能主義双方の理論を折衷的に取り入れ,課題中心アプローチを体系化した。
3 ハミルトン(Hamilton,G.)は,人とその人を取り巻く状況とその両者の相互作用の視点から「状況の中の人」という概念を提唱した。
4 リード(Reid,W.)は,ソーシャルワークの共通基盤として,実践に必須の要素に,「価値の体系」を挙げた。
5 ジャーメイン(Germain,C.)とギッターマン(Gitterman,A.)は,役割理論を基盤とし,人と環境との交互作用に焦点を当て両者の調和を目指す理論を説いた。
おいしいところを実にうまくまとめた問題です。
勉強不足の人は,20%以上の確率で正解するのは難しいのではないでしょうか。
正解は,選択肢1です。
1 リッチモンド(Richmond,M.)は,ケースワークの過程と対象として,個人に直接働きかける直接的活動と社会環境を通じて働きかける間接的活動を挙げた。
リッチモンドに関する出題は近年少なくなってきていますが,何と言っても「ケースワークの母」と呼ばれる人物です。
リッチモンドを覚えないで誰を覚えるのか,と言える人です。
社会福祉士を目指す人の中でリッチモンドを学ばない人は,まずいないと言ってもよいでしょう。
リッチモンドで,絶対に押さえなければならないのは,彼女が定義したソーシャル・ケース・ワークの定義です。
人と環境の間を,個別に意識的に調整することを通して,パーソナリティを発達させる諸過程である
人に働きかけるのが直接的活動です。
環境に働きかけるのが間接的活動です。
特に押さえておきたいのは,環境に働きかけるのが間接的活動です。
先進国における個人主義傾倒への懸念が,2014年の「ソーシャルワークのグローバル定義」改訂につながったことを前回学びました。
改めてみると,リッチモンドも環境に目を向けていたことに気がつくでしょう。
しかし,基本は医学モデルなので,パーソナリティの変容に行きつきます。
そこに批判が集まるのかもしれません。
しかし,リッチモンドは,ケースワークを科学化した立役者です。
現在,批判的な物の見方がされたとしても,彼女の功績が色あせることは一切ないと言えるでしょう。
それでは,ほかの選択肢もみてみましょう。
2 パールマン(Perlman,H.)は,診断主義と機能主義双方の理論を折衷的に取り入れ,課題中心アプローチを体系化した。
パールマンが,診断主義と機能主義双方の理論を折衷的に取り入れたことは適切ですが,体系化したのは,問題解決アプローチです。
3 ハミルトン(Hamilton,G.)は,人とその人を取り巻く状況とその両者の相互作用の視点から「状況の中の人」という概念を提唱した。
「状況の中の人」という概念を示したのは,心理社会的アプローチのホリスです。
ハミルトンは,診断主義ケースワークを提唱した人です。診断主義ケースワークの発展したものが,心理社会的アプローチということになります。
4 リード(Reid,W.)は,ソーシャルワークの共通基盤として,実践に必須の要素に,「価値の体系」を挙げた。
「ソーシャルワーク実践の共通基盤」をまとめたのは,バートレットです。
5 ジャーメイン(Germain,C.)とギッターマン(Gitterman,A.)は,役割理論を基盤とし,人と環境との交互作用に焦点を当て両者の調和を目指す理論を説いた。
ジャーメインとギッターマンが提唱したのは,生態学モデル(エコロジカルモデル)です。
基盤としているのは,生態学的視点です。
役割理論を基盤としているのは問題解決アプローチや課題中心アプローチなどです。
そのため,これらのアプローチを使えるのは,クライエントが変わりたいという動機づけがなされていることが必要です。つまり,クライエントという役割を演じることができるクライエントだということになります。これが役割理論を基盤とするという意味です。