2021年1月13日水曜日

成年後見人の権限

今回は,成年後見人の権限を押さえていきましょう。

成年後見人は,以下の事務を行います。

・成年被後見人の財産の管理(財産管理)

・成年被後見人の生活,療養看護(身上監護)


これらを行う際には,成年被後見人の意思の尊重し,かつ,その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない,と規定されています。


成年後見人の事務に含まれないのは,医療同意権,事実行為(身の周りの世話など)などです。


それでは,今日の問題です。


第28回・問題83 事例を読んで,成年後見人であるL社会福祉士の法的な権限に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。

〔事 例〕

 要介護2の認定を受けていたMさんの認知症が悪化したため,L社会福祉士が,Mさんの成年後見人に選任された。これまで,Mさんは長年住み慣れた借家で,訪問介護を利用し独居生活を行ってきていたが,認知症の進行に伴って,ガスコンロの消し忘れでボヤをおこすなど,独居生活に不安がみられるようになっている。

 また,Mさんには白内障がある上,最近は体力も低下しており,体調をくずして家で寝込むことが多くなっている。

1 Mさんの意思に反していても,介護保険施設に強制的に入所させることができる。

2 Mさんの同意があれば,家庭裁判所の許可なく借家契約を解約できる。

3 Mさんの状態の変化を理由に,要介護度の区分変更を申請できる。

4 Mさんの白内障の手術のために,医療同意権を行使することができる。

5 Mさんの預金を下ろして,過熱防止などの安全装置付ガスコンロに買い替えることができる。


制度系の事例問題は,知識不足では正解するのがかなり厳しいものです。

しっかりした知識が必要です。


それでは,解説です。


1 Mさんの意思に反していても,介護保険施設に強制的に入所させることができる。

成年後見人は,介護契約の締結はできますが,その際,成年被後見人の意思を尊重しなければなりません。


2 Mさんの同意があれば,家庭裁判所の許可なく借家契約を解約できる。

居住不動産の売却,賃貸借の解除などの場合は,家庭裁判所の許可が必要です。


3 Mさんの状態の変化を理由に,要介護度の区分変更を申請できる。

要介護度の区分変更の申請は,身上監護に含まれると考えられます。


4 Mさんの白内障の手術のために,医療同意権を行使することができる。

医療同意権は,成年後見人の事務に含まれません。


5 Mさんの預金を下ろして,過熱防止などの安全装置付ガスコンロに買い替えることができる。

Mさんの預金を下ろすのは,財産管理,過熱防止などの安全装置付ガスコンロに買い替えるのは,身上監護にあたります。

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