今回は,法定後見制度を学びます。
類型には,「後見」「保佐」「補助」があります。
成年後見人,保佐人,補助人には,それぞれの権限が与えられていますが,すべてに共通するものには,
①身分行為(婚姻など)は,取り消すことができない。
②日用品の購入その他日常生活に関する行為は,取り消すことができない。
というものがあります。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題78 法定後見における保佐に関する次の記述のうち正しいものを1つ選びなさい。
1 保佐開始の審判を本人が申し立てることはできない。
2 保佐人に対して,同意権と取消権とが同時に付与されることはない。
3 保佐人が2人以上選任されることはない。
4 法人が保佐人として選任されることはない。
5 保佐人が日常生活に関する法律行為を取り消すことはできない。
なんて簡単な問題なのでしょう。
しっかり勉強した人にとっては,ヤバイほど簡単です。
正解は,選択肢5です。
5 保佐人が日常生活に関する法律行為を取り消すことはできない。
ほかの選択肢がわからなくても,勉強した人なら,これが正解だとわかるはずです。
しっかり勉強した人なら,答えがすぐわかる問題ですが,「権利擁護と成年後見制度」の科目では,これほど正解が明確な問題はめったにありません。
今取り組んでいる「権利擁護と成年後見制度」は,ややもすると0点になることが多い科目です。
そのために近年では,勉強をしっかりした人は確実に正解できる問題を入れ込んでいるのです。
それでは,ほかの選択肢も確認します。
1 保佐開始の審判を本人が申し立てることはできない。
後見等開始の請求権者は,以下のとおりです。
・本人
・配偶者
・四親等以内の親族
・検察官 等
ということで,本人も申立てができます。
四親等以内の親族とは,いわゆる「いとこ」の範囲です。
ちょっと注意なのは,親族の範囲です。
親族とは,六親等以内の血族,および三親等以内の姻族です。
本人および配偶者は,0親等です。配偶者のいとこは四親等ですが,本人からみると親族になりません。
なぜなら,配偶者のいとこは,姻族なので,親族の範囲外となるからです。
申立てについて注意したいのは,「補助」の場合です。
補助の申立ては,本人以外の申立ての場合,本人の同意が必要です。
補助の申立て以外は,本人の同意は必要とされません。
2 保佐人に対して,同意権と取消権とが同時に付与されることはない。
同意権は,保佐人等の同意がなく,被保佐人等が行った法律行為を取り消すことができる権利です。
そのため,同意権と取消権は必ず同時に付与されます。
3 保佐人が2人以上選任されることはない。
成年後見人等は,複数選任することができます。
複数を選任する意味は,それぞれ担当するものを分掌することです。
たとえば,
所有不動産1に関するものは,保佐人A
所有不動産2に関するものは,保佐人B
預貯金に関するものは,保佐人C
といった感じです。
資産のないものはイメージしにくいですが,ものすごい資産家の場合は,こういったこともあり得ます。
4 法人が保佐人として選任されることはない。
法人も成年後見人等に選任されます。
社会福祉士の場合,都道府県社会福祉士会等が成年後見人等に選任されます。
<今日の一言>
近年の国試問題は,科目0点にならないように慎重に問題を構成しています。
今日の問題は,その典型例です。
勉強不足の人は正解するのが難しいですが,勉強をしっかりした人なら正解できるように出題されます。
そのパターンは,2種類あります。
①正解がすぐわかるもの。
②ほかの選択肢を消去することで,正解が残るもの。
国家試験が過酷なのは,①のタイプは少なく,②のタイプが多いからです。
②のタイプが多ければ多いほど,手ごたえのないものとなります。
手ごたえがなくても,確実な知識をつけた人は合格基準点を超えられるのが,近年の国試の特徴です。
もし何度も国試で合格できないとすれば,自分を信じ切れない場合です。
疑心暗鬼だと,怖くないものも怖く見えてきます。
これから国試までの勉強で重要なのは,「やりきった」という気持ちをつけることなのかもしれません。