2021年1月26日火曜日

倫理的ジレンマについて

ジレンマとは,ある状況に対し,2つ以上の選択肢が存在し,そのいずれを選んでも望ましい状況にならないことをいいます。

 

倫理的ジレンマといった場合は,クライエントなどとの関係性と専門職としての倫理に照らし合わせて不適切になってしまうことをいいます。

 

たとえば,クライエントがプレゼントを持ってきた場合,受け取るか受け取らないかで悩むような場合です。

 

受け取らないとクライエントとの関係が壊れてしまいそうに思うし,受け取ると専門職としての倫理に反します。

 

それでは,今日の問題です。

 

28回・問題96 事例を読んで,C職員(社会福祉士)に生じる倫理的ジレンマとして,該当するものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 社会福祉協議会のC職員は,クライエントのDさん(73歳,女性)の自宅を訪問した際,「マフラーを編んだので,ぜひもらって欲しい」と言われた。C職員は,マフラーをもらうことは物品の受領に当たり,そのことを記録に残さなければならないが,そもそも専門職として倫理的に問題があると考えた。そこでC職員は,「勤務先の規則で禁止されていますので,いただくことはできません」と言った。するとDさんは,「そんな堅いこと言わないで。受け取ってもらえると嬉しいです」と言った。

1 信用失墜行為の禁止と利用者との関係

2 利用者との関係と,プライバシーの尊重

3 プライバシーの尊重と最良の実践を行う責務

4 秘密の保持と,記録の開示

5 記録の開示と情報の共有

 

この問題はそれほど難しくはないでしょう。

正解は,選択肢1です。

 

プレゼントを受け取ること → 信用失墜行為の禁止

プレゼントを受け取らないこと → 利用者との関係

 

今日は,もう一問みてみましょう。

 

32回・問題96 事例を読んで,D社会福祉士が抱える倫理的ジレンマとして,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 Ⅴ病院はこの地域の急性期医療の拠点であり,複数の社会福祉士が働いており,円滑な退院支援を心掛けている。D社会福祉士が担当したEさんは一人暮らしの85歳の男性で猛暑による脱水症状のため緊急搬送された。入院して10日目で全身状態は落ち着き,D社会福祉士にEさんの速やかな退院支援を行うよう依頼があった。Eさんは今回の入院で一人暮らしが不安になり,当面病院での入院継続を希望している。困惑したD社会福祉士は,同僚のF社会福祉士にも相談することにした。

1 クライエントの利益に対する責任と,記録の開示

2 クライエントに対する責任と,所属機関に対する責任

3 同僚に対する責任と,専門性への責任

4 クライエントとの信頼関係と,信用失墜行為の禁止

5 守秘義務と,制度や法令遵守に対する責任

 

28回の問題と異なり,何が問題になりそうなのかが明確ではありません。そこに気づくことから始まる問題だと言えるでしょう。

 

ジレンマの状況を整理します。

 

・速やかな退院支援を行うこと

・本人は入院継続を希望していること

 

それにあてはまるものは,選択肢2しかありません。

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