今回は,親権を取り上げたいと思います。
親権は民法で規定される,子の利益のために子の監護及び教育をする権利です。
具体的には,財産管理と身上監護(身近にいて世話や教育をすること)を行います。
ただし,親権者が身上監護を行えない場合,ほかの者を監護者に定めることができます。
たとえば,婚姻を解消すると,一方を親権者に定めなければなりませんが,親権者にならなかった親が監護者になるということも考えられます。
民法では,成人年齢とは別に,15歳を半成人とみているように感じます。
婚姻を解消しようとする際,協議によって親権者を定めますが,協議が整わなかった場合,家庭裁判所が親権者を定めます。その際に,子が15歳以上の場合,子の陳述を聞きます。
15歳になると遺言することができます。
特別養子縁組は,原則15歳以上では特別養子となることができません。
といったような具合です。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題79 父母の離婚に伴い生ずる子(15歳)をめぐる監護や養育や親権の問題に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 親権者にならなかった親には,子の養育費を負担する義務はない。
2 子との面会交流について父母の協議が成立しない場合は,家庭裁判所が定める。
3 親権者にならなかった親は,子を引き取り,監護養育することはできない。
4 家庭裁判所は,父母の申出によって離婚後も共同して親権を行うことを定めることができる。
5 家庭裁判所が子の親権者を定めるとき,子の陳述を聴く必要はない。
この問題は,シンプルに考えることが大切です。
それを変に考え込むと落とし穴に落ちかねないので注意が必要です。
それでは,解説です。
1 親権者にならなかった親には,子の養育費を負担する義務はない。
民法では,離婚後の子の監護に関して,以下のように定めています。
離婚後の子の監護に関する事項の定め等 第七百六十六条 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。 2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。 3 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前二項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。 4 前三項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。 |
親権者にならなかった親も子の養育費を負担する義務があります。
養育費は協議で定めますが,定められなかった場合は,家庭裁判所が定めます。
2 子との面会交流について父母の協議が成立しない場合は,家庭裁判所が定める。
これが正解です。
子との面会交流について父母の協議が成立しない場合は,家庭裁判所が定めます。
3 親権者にならなかった親は,子を引き取り,監護養育することはできない。
親権者が親権を行使できない場合,親権者にならなかった親が監護者となり,監護養育することは可能です。
4 家庭裁判所は,父母の申出によって離婚後も共同して親権を行うことを定めることができる。
親権は,父母の婚姻中は父母が共同して行います。しかし,離婚する場合は,一方を親権者として定めます。共同して親権を行うことはできません。
5 家庭裁判所が子の親権者を定めるとき,子の陳述を聴く必要はない。
子が15歳未満では,子の陳述を聴く必要はありませんが,15歳以上の場合は,聞く必要があります。