今回から科目は,「相談援助の理論と方法」に入ります。
ほかの科目と同じように勉強しないと得点を稼ぐ科目にはなりません。
事例が多いので,簡単だと思っていると足元をすくわれます。
今回は,「集団を活用した相談援助」です。つまりグループワーク(集団援助技術)です。
「集団を活用する」というのは,グループダイナミクス(集団力学)を活用することです。
グループダイナミクスを活用しないのであれば,ケースワーク(個別援助技術)でよいのです。
グループワークが難しいのは,グループ活動をしながら同時に個別援助を行うところにあります。
グループワークのプロセスを一応紹介しておきます。
プロセス |
段階 |
注意点 |
準備期 |
ワーカーがグループワークを行う準備を行う段階 |
この段階には「波長合わせ」と呼ばれるクライエントの抱える問題,環境,行動特性をワーカーが事前に把握する段階が含まれます。 波長合わせは,準備期に行うので注意が必要です。 |
開始期 |
メンバーが集まって,グループワークを始める前までの段階 |
この段階には「契約」と呼ばれるワーカーの役割などをメンバーに説明する段階が含まれます。 グループワークでの約束事などを確認し,援助関係をつくります。 |
作業期 |
ワーカーとメンバーが課題解決に向けて,活動を行う段階 |
この段階では,グルーブの仲間意識が生じたり,対立したりすることもあります。 しかし,これらはグルーブダイナミクス(集団力学)を活用したグループワークでは重要な意味を持ちます。 |
終結期 |
グループワークを終える段階 |
振り返りや反省などを行い,次の段階へつなげます。そのため,移行期とも言われます。 |
それでは,今日の問題です。
第28回・問題98 集団を活用したソーシャルワーカーの相談援助に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 展開の開始期では,グループ内での行動は制限せずに援助を行う。
2 グループメンバーへの援助では,各個人の特性を認識して,個別化したアプローチを活用する。
3 グループメンバー間の暗黙の葛藤に対しては,それが表面化しないように働きかける。
4 プログラム活動では,全員が同じ動きを行うことを優先するように求める。
5 サブグループへの対応は,グループ全体への影響を考慮せずに行う。
とてもよくまとまった問題だと思います。グループワークの重要ポイントが盛り込まれています。
国試問題の中には,意味のない選択肢が含まれているものがあります。試験委員も人の子です。問題づくりは大変なのでしょう。
そういった問題は勉強にあまり役立たないので,なるべくなくしてほしいものです。
それでは,問題を見ていきましょう。
1 展開の開始期では,グループ内での行動は制限せずに援助を行う。
表に書いたように,開始期は「契約」の段階が含まれます。
グループの約束事とは,たとえば「こういったことはしてはいけない」といったルールを示すことです。
世の中には,無制限で認められるものは存在しないように思います。
2 グループメンバーへの援助では,各個人の特性を認識して,個別化したアプローチを活用する。
これが正解です。
グループワークは集団活動ですが,メンバー個別の問題解決のためにかかわっていきます。
これがグループワークの醍醐味だと言えるでしょう。
3 グループメンバー間の暗黙の葛藤に対しては,それが表面化しないように働きかける。
グループ活動は葛藤が大切です。
葛藤は変化しようとするきっかけとなります。そのためできるワーカーは,葛藤を引き起こすようにかかわります。
葛藤が現れるのが怖いのは,次の一手が用意されていないからです。
できるワーカーなら,葛藤が現れたら「予定通りになった」と,ほくそ笑むことでしょう。
4 プログラム活動では,全員が同じ動きを行うことを優先するように求める。
グループワークは,メンバー個々が抱える問題の解決のために行われます。
プログラム活動は,問題を解決するための手段です。全員が同じ動きをすることが個々の問題解決のために必要なら,それはそれでよいですが,ほとんどの場合はそんな必要はありません。
手段が目的化しないように気をつけたいものです。
5 サブグループへの対応は,グループ全体への影響を考慮せずに行う。
サブグループとは,グループメンバーの中で,仲の良いメンバーがつくり上げられることです。
グループ活動に支障があるような場合は,グループワーカーはサブグループに働きかけます。
サブグループができたら解消するように働きかけるといった出題がなされますが,できるワーカーはそんなことでは慌てることはありません。
サブグループがグループに良くない影響を与えるということが明確になった時点で働きかけることで十分です。