適切な調査結果を得るためには,適切な質問用紙を作成することが欠かせません。
アンケートはよく行われますが,注意ポイントを知っているのと知らないのとでは大きな差が生じます。
最悪の場合,アンケートを実施したという自己満足に終わってしまうこともあります。
大手報道機関では,使用した調査票を公開して世論調査を発表していることもあります。
それは,調査票の作成方法によって,結果が異なるこがあることを示していると言えます。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題86 質問紙の作成方法に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 質問文の中で専門用語を用いる場合,まず,その用語の認識について確認する濾過質問を行った上で,その用語を知っている者のみに尋ねることが望ましい。
2 質問項目の順番が後になるほど,回答者の集中力が低下するため,複雑な質問から順に配置することが望ましい。
3 質問紙における回答の形式は,自由回答法を主とし必要に応じて選択肢法を用いることが望ましい。
4 回答の形式として選択肢法を用いる場合,想定される選択肢を網羅するため選択肢の数が多いほど望ましい。
5 キャリーオーバー効果を避けるため,質問の配置は,内容に関係なくランダムな順番で行うことが望ましい。
質問紙を作成する際,避けたいのは
・ダブルバーレル質問
・ステレオタイプ質問
・キャリーオーバー効果
などです。
これらは,どんな場合でも避けなければなりません。
それでは,解説です。
1 質問文の中で専門用語を用いる場合,まず,その用語の認識について確認する濾過質問を行った上で,その用語を知っている者のみに尋ねることが望ましい。
これが正解です。
濾過質問は,この時初めて出題されたものです。
この時,受験した人は面食らったことでしょう。
しかし,日本語なので意味を推測できます。
濾過質問の濾過は,「濾(こ)すこと=フィルター」です。
フィルターを通して,選別するという意味だと推測できそうです。
注意したいのは,国家試験に向けた勉強では,知らないことがあったら調べることができますが,国家試験会場では調べることができないことです。
わからないことがあったら調べるのは大切な姿勢ですが,わからない用語があったら,思考が止まることがあってはなりません。
おおよその意味がわかればOKといったことも時には必要です。
さて,濾過質問は,問題文の通りですが,具体的には,
Q1 あなたは自動車運転免許を持っていますか?
1.はい 2.いいえ
Q2 Q1で「はい」と答えた方のみに質問します。あなたが免許を取ったのは何歳の時ですか?
1.18~19歳 2.20~22歳 3.23~24歳 4.その他( 歳)
といった感じです。
しかし,中には,Q1で「いいえ」と答えたにもかかわらず,Q2に答えてしまう人もいるでしょう。
こういったミスは,「非標本誤差(測定誤差)」と言います。「非標本誤差(測定誤差)」は,自計式,他計式ともに生じますが,ミスを減らすためには,他計式が適切です。
それでは,ほかの選択肢も見てみましょう。
2 質問項目の順番が後になるほど,回答者の集中力が低下するため,複雑な質問から順に配置することが望ましい。
質問項目の順番が後になるほど,回答者の集中力が低下するのは,その通りでしょう。
しかし,複雑な質問が先にあると答えるのが面倒だと思わないでしょうか。
複雑な質問が不可避なら後に配置したほうが適切だと言えますが,複雑な質問をよりわかりやすい質問にするのも腕の見せ所でしょう。
3 質問紙における回答の形式は,自由回答法を主とし必要に応じて選択肢法を用いることが望ましい。
1.18~19歳 2.20~22歳 3.23~24歳 4.その他( 歳)
1~3が「選択肢法」です。4が「自由回答法」です。
この程度だとそれほど面倒ではないかもしれませんが,答えるのが楽なのは,選択肢法です。
調査に慣れていない人は,いろいろ聞きたくて,自由回答欄を多く設けがちですが,自由回答は,必要最低限にとどめるのが適切です。
4 回答の形式として選択肢法を用いる場合,想定される選択肢を網羅するため選択肢の数が多いほど望ましい。
これは,もちろん間違いですが,間違えないために,テクニックがあります。
それは,極端な例を考えてみることです。
たとえば,「〇〇の請求期間には制限がない」といった出題の場合です。
その人が長生きして,何十年もあとになって「〇〇を請求し忘れていた」と思い出して,請求してもよいことになります。
請求し忘れを証明する文書は,役所にはおそらく残されていないはずです。
5 キャリーオーバー効果を避けるため,質問の配置は,内容に関係なくランダムな順番で行うことが望ましい。
キャリーオーバー効果は避けなければなりません。
しかし,内容に関係なくランダムに配置すると回答者は混乱してしまいます。
とても答えにくいものになるでしょう。
同じようなテーマは固めます。そのうえでキャリーオーバー効果に配慮して質問の順番を考えます。
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