今回は,診療報酬制度を取り上げます。
診療報酬とは,医科,歯科,調剤に対して医療保険から支払われるものです。
すべて点数(1点は10円)が決まっており,全国のどの医療機関で医療を受けても共通です。
ここが介護報酬と異なる点です。
診療報酬の支払い方式には,現在3つの種類があります。
出来高払い方式 |
医療行為ごとの点数を合わせて支払うもの。 外来診療はすべて出来高払い方式が採用されている。 |
包括払い方式 |
医療行為にかかわらず,定額を支払うもの。 |
DPC方式 |
急性期病院で採用され,定額部分と出来高部分を組み合わせて支払うもの。入院基本料は包括払い方式,手術などは出来高払い方式が採用される。 |
それでは,今日の問題です。
第28回・問題72 日本の診療報酬制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 DPC対象病院の入院医療にかかる費用は,包括医療費支払い制度が適用される。
2 訪問看護にかかる費用は,居宅サービス計画に基づく利用であっても,医療保険から支払われる。
3 在宅医療の往診では,患家の求めにかかわらず医師の判断に基づき行った場合であっても,往診料を請求できる。
4 療養病床の入院基本料は,出来高払い方式によって診療報酬が算定される。
5 退院調整加算を請求できる病院の施設基準の中では,退院に係る調整部門の設置と理学療法士又は作業療法士の配置が定められている。
この問題は,あることに気が付けば,正解できる可能性が高まる問題です。
それは,
2 訪問看護にかかる費用は,居宅サービス計画に基づく利用であっても,医療保険から支払われる。
3 在宅医療の往診では,患家の求めにかかわらず医師の判断に基づき行った場合であっても,往診料を請求できる。
の2つの選択肢です。
それぞれの文章が正しいのであれば,
2 訪問看護にかかる費用は,医療保険から支払われる。
3 在宅医療の往診では,医師の判断に基づき行った場合,往診料を請求できる。
という文章になるはずです。
それでは解説です。
1 DPC対象病院の入院医療にかかる費用は,包括医療費支払い制度が適用される。
DPC対象病院は,包括支払い方式(包括医療費支払い制度)と出来高払い方式を組み合わせて適用されています。
そのうち,入院にかかる費用は包括払い方式が適用されます。
DPC対象病院であっても,手術などの部分は出来高払い方式が適用されます。
2 訪問看護にかかる費用は,居宅サービス計画に基づく利用であっても,医療保険から支払われる。
居宅サービス計画は,要介護者が介護保険サービスを利用する場合,居宅介護支援事業所の介護支援専門員が作成するものです。
つまり訪問看護は,居宅サービス計画に基づく利用の場合は,介護保険から支払われます。
「であっても」が怪しいのです。
3 在宅医療の往診では,患家の求めにかかわらず医師の判断に基づき行った場合であっても,往診料を請求できる。
またまた「であっても」です。
在宅医療の往診では,患家の求めに応じて行った場合,往診料を請求できます。
4 療養病床の入院基本料は,出来高払い方式によって診療報酬が算定される。
療養病床の入院基本料は,包括払い方式が採用されています。
5 退院調整加算を請求できる病院の施設基準の中では,退院に係る調整部門の設置と理学療法士又は作業療法士の配置が定められている。
退院調整加算は,現在「入退院調整加算」に変更されています。
配置が定められているのは,看護師と社会福祉士です。
退院調整加算は,社会福祉士が初めて診療報酬上で評価された加算として,歴史に刻まれています。
社会福祉士を目指す人なら必ず覚えておきたいものです。