事例問題は確実に正解したいですが,実は多くの人が思うほど確実に正解するのは簡単ではありません。
事例を事例だと思って解くと間違えます。
まずは,問題を見ましょう。
第28回・問題97 事例を読んで,チームアプローチに基づくケース会議の開催提案に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
〔事 例〕
N市教育委員会に所属するEスクールソーシャルワーカー(社会福祉士)は,V中学校から相談を受けた。その内容は,F君(13歳)が半年前から保健室登校をするようになり,2か月前からは不登校状態にあるというものであった。担任や両親などの関係者から話を聞くと,「気持ち悪い」,「学校に来るな」などと,ある生徒に言われたことがきっかけとなったとのことであった。また担任は,F君宅への電話や訪問を続けるなど自分ひとりで解決しようと熱心に関わっていることが分かった。
Eスクールソーシャルワーカーは,ケース会議の開催を提案した。
1 スクールカウンセラーに心理専門職としての意見を聴く。
2 F君が教室復帰できなかった責任を明確にすることを第一の課題とする。
3 学校全体として取り組むため,校長,副校長の参加を依頼する。
4 事実関係を確認するため,F君を中傷していた生徒の参加を依頼する。
5 これまでの交友関係の情報を得るため,F君の旧友の参加を依頼する。
スクールソーシャルワーカー(SSW)はとても重要ですが,国家試験ではSSWを取り扱った事例問題はそれほど多くはありません。
最も多いのは,医療ソーシャルワーカー(MSW)を取り扱ったものです。
SSWは「チーム学校」の一員です。チーム学校とは,校長を中心としたチームアプローチです。チーム学校のメンバーには,スクールカウンセラーも含まれます。
なぜ今,チーム学校が注目されるかと言えば,この事例の担任のように,今までは教師の頑張りでは対応しきれない複雑で深刻な問題があるからです。
担任が生徒の発するサインに気づかなければ,生徒が自殺に追い込まれることさえあります。悲しいですが,日本の10~30歳代の死因の第1位は自殺なのです。
さて,この問題のポイントは,「チームアプローチ」です。
事例として読むと間違えます。確実に正解するためには,チームアプローチとなっている選択肢をひたすら探すことです。
チームアプローチとなっているのは,選択肢1と3しかありません。あいまいさはどこにも存在しません。
1 スクールカウンセラーに心理専門職としての意見を聴く。
先に書いたように,スクールカウンセラーもチーム学校の重要なメンバーです。
スクールカウンセラーを担う国家資格としては,公認心理師があります。
公認心理師はまだ新しい国家資格ですが,おそらく今後,教育分野では連携する場面は増えると考えられます。
3 学校全体として取り組むため,校長,副校長の参加を依頼する。
本来は,SSWが依頼せずとも校長はチーム学校のリーダーなので,参加しなければならないものです。
そういった意味では,この選択肢は変ですが,チームアプローチなので選ばざるを得ないと言えるでしょう。
この問題は,チームアプローチはどれか,という問題です。
それでは,ほかの選択肢も確認しましょう。
2 F君が教室復帰できなかった責任を明確にすることを第一の課題とする。
チームアプローチの視点はどこにもありません。
4 事実関係を確認するため,F君を中傷していた生徒の参加を依頼する。
この対応が良いか悪いかということは関係なく,チームアプローチではないので,正解にはなりません。
5 これまでの交友関係の情報を得るため,F君の旧友の参加を依頼する。
F君の旧友はチーム学校のメンバーではありません。
したがってチームアプローチではありません。
選択肢を並び替えてみると,実に明快となります。
<チームアプローチであるもの>
・スクールカウンセラーに心理専門職としての意見を聴く。
・学校全体として取り組むため,校長,副校長の参加を依頼する。
<チームアプローチではないもの>
・F君が教室復帰できなかった責任を明確にすることを第一の課題とする。
・事実関係を確認するため,F君を中傷していた生徒の参加を依頼する。
・これまでの交友関係の情報を得るため,F君の旧友の参加を依頼する。
<今日の一言>
もしかすると,この問題はチームアプローチを意識せずとも正解にたどりつける問題かもしれません。
しかしたまたまそうなっているだけの話です。
ミスしないためには,設問を忘れないようにしたいものです。