「社会調査の基礎」が難しいと思う人は多いと思います。
確かに本格的に学べばものすごく難しいことはその通りだと思います。
この科目は,現在のカリキュラムから加わった科目です。
初めてだった第22回国試では,とても難しい問題が出題されました。
試験委員がどのレベルで出題すればよいかわからなかったからだと思います。
その後は,その反省からか,それほどの内容は出題されていません。
しかし,第22回国試の影響で,この科目はものすごく難しいだというイメージが定着して今に至ります。
実際には,それほど難解なものはそれほど出題されていないのですが,イメージが先行して,勝手に自滅していく人が多いように思います。
昨今の国試は,過去問の範囲をきっちり押さえることができれば,0点を恐れることはなく,満点に近い点数が取れるでしょう。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題85 4種類の尺度水準,すなわち名義尺度,順序尺度,間隔尺度,比例尺度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 大小関係を示すことができるのは,名義尺度と比例尺度の2つだけである。
2 意味のある算術平均を算出できるのは,間隔尺度と比例尺度の2つだけである。
3 中央値を算出できるのは,順序尺度と間隔尺度の2つだけである。
4 最頻値を算出できるのは,順序尺度,間隔尺度,比例尺度の3つだけである。
5 カテゴリーごとの分類ができるのは,順序尺度,間隔尺度,比例尺度の3つだけである。
勉強不足の人が正解することは難しい問題です。
勉強した人でも,うっかりするとミスするような問題です。
尺度水準とは,測定したものを数値化するものをいいます。
尺度水準には,名義尺度,順序尺度,間隔尺度,比例尺度があります。
ミスしないために,4つの尺度水準をきっちり押さえることが必要です。
まずは,名義尺度です。
測定したものを区別するものです。
たとえば,
1.日本人
2.アメリカ人
3.イギリス人
4.中国人
5.その他
といったものです。ここでは1から5までの数字をつけていますが,その数字にはまったく意味がありません。
標本の性質を表すものに「代表値」というものがあります。
よく使われる代表値には「最頻値」「平均値」「中央値」があります。
このうち,名義尺度では,最頻値は算出することができます。
この集団では,アメリカ人が最も多かった,という具合です。
次は,「順序尺度」です。
順序尺度は,数値の大小だけに意味があるものです。
たとえば,果物の好き嫌いについて
りんご 1.大好き 2.好き 3.ふつう 4.嫌い 5.大嫌い
みかん 1.大好き 2.好き 3.ふつう 4.嫌い 5.大嫌い
いちご 1.大好き 2.好き 3.ふつう 4.嫌い 5.大嫌い
人によって,それぞれの意味合いが異なります。
しかし,りんごよりもいちごを好む人が多かったという最頻値は算出できます。
また平均値は算出することに意味はありませんが,中央値は算出することができます。
次は,間隔尺度です。
この尺度は,数値の大小に意味をもち,間隔は等しいものです。
間隔尺度の代表は,気温です。
後からでてくる比例尺度と異なる点は,ゼロ以下もあることです。
気温は,0度以下もあります。気温は誰かが氷結点を摂氏0度と定めただけです。
この尺度は,最頻値,中央値,平均値とも算出することができます。
ただし,掛けたり割ったりすることに意味はありません。
例えば,昨日が10℃で,明日の予報は5℃だった場合,気象予報士が「明日は今日の気温の50%になるでしょう」と言ったらおかしなことを言っていると思うことでしょう。
間隔尺度は,掛けたり割ったりすることに意味はありませんが,足したり引いたりすることはできます。
先ほどの気温の例では,
「明日は今日の気温よりも5℃下がるでしょう」
これはいかがですか? 適切な天気予報となりましたね。
最後は,比例尺度です。
比例尺度は,数値の大小に意味をもち,間隔は等しい尺度です
ここまでは,間隔尺度と同じです。
異なるのは,0以下の数値はないことです。
教科書などには,これを「絶対的なゼロがあること」と書いてあるでしょう。
比例尺度の例は,体重や身長です。
0㎏,0cm以下はありません。
比例尺度は,掛けたり割ったりすることに意味があります。
例えば,生まれた時の体重が2倍になるのは,3歳6か月ころ。
身長が2倍になるのは,3~4歳ころ。
といった具合です。
ここでは,例として
名義尺度は 国籍
順序尺度は 嗜好調査
間隔尺度は 気温
比例尺度は 体重・身長
を挙げました。これは覚えやすいものにアレンジされても良いと思います。
具体的に理解すればするほど,国試では大きな力を発揮することでしょう。
それでは,解説です。
1 大小関係を示すことができるのは,名義尺度と比例尺度の2つだけである。
名義尺度は,数値の大小には意味がないことはすぐわかるので,消去するのはそれほど難しくないでしょう。
数値の大小に意味があるのは,名義尺度以外です。
2 意味のある算術平均を算出できるのは,間隔尺度と比例尺度の2つだけである。
これが正解です。算術平均(いわゆる平均値のこと)は,算出しようと思えば,4つともできますが,名義尺度と順序尺度では意味がある数値になりません。
3 中央値を算出できるのは,順序尺度と間隔尺度の2つだけである。
中央値を算出できるのは,名義尺度以外です
名義尺度でも中央値を算出しようと思えばできますが,意味のある数値にはなりません。
4 最頻値を算出できるのは,順序尺度,間隔尺度,比例尺度の3つだけである。
最頻値は,4つの尺度ともできます。名義尺度で意味のある代表値を算出できるのは,名義尺度だけです。
5 カテゴリーごとの分類ができるのは,順序尺度,間隔尺度,比例尺度の3つだけである。
カテゴリーについては,説明していないので,ここで紹介します。
カテゴリーとは,測定値をグループ化することです。
名義尺度の例は,国籍です。
「1.日本人」であってもさまざまな日本人がいます。性,年齢,出身地などさまざまありますが,すべて「1.日本人」とカテゴリー化しています。
別な例を出すと,日本人と中国人,アメリカ人とイギリス人を合わせて分類することもできます。
順序尺度の例は,嗜好調査です。
「1.大好き」であっても,これ以上好きなものがないほど大好き,とっても大好き,みかんに比べるとちょっと落ちるけれど大好きには間違いない,などさまざまな大好きがありますが,それをすべて「1.大好き」とカテゴリー化しています。
間隔尺度と比例尺度は,1℃,1㎏だとすれば,すべての人が等しくその状態を把握できます。名義尺度と順序尺度のようなあいまいさはありません。
しかし,間隔尺度も比例尺度もカテゴリーごとに分類できるのです。
間隔尺度は,1~5℃,6~10℃,11~15℃
比例尺度は,1~5㎏,6~10㎏,11~15㎏
といった具合です。
つまりカテゴリーごとの分類は,4つの尺度すべてできます。
<今日の一言>
「社会調査の基礎」で正しく確実に理解するには,身近なものに置き換えて覚えることです。
「暗記が苦手だ」という人はたくさんいます。
しかし,「暗記」という発想をやめてみると,その亡霊から解き放たれることでしょう。
この時期にノートに書いて覚えている人はいないと思いますが,その勉強法はこの国試ではよい結果を生み出さないことが多いようです。
正しく確実に理解するという視点が抜けがちだからです。
書いて覚えることが効果的なのは筆記式の試験です。社会福祉士の国試は,マーク式です。筆記式ではありません。