今回は,医療法を取り上げたいと思います。
医療法では,主に以下のようなことが定められています。
・医療に関する選択の支援(広告規制など)
・医療安全(医療事故防止,医療事故調査・支援センターなど)
・病院等(開設,管理,地域支援病院&特定機能病院など)
・医療計画
・医療法人
・地域医療連携推進法人
このうち,ホットなものは,「地域医療連携推進法人」です。
地域医療連携推進法人は,地域の医療機関相互間の機能の分担・連携を行うために,地域の病院等によって組織される一般社団法人として都道府県知事の認定を受けて設立される法人です。
地域包括ケアシステムを構築するために,新しく設けられたものです。
そのため,現時点(第32回国試まで)では,まだ国家試験では出題されたことがありません。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題73 医療法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 市町村は,医療機関に関する医療機能情報を集約し住民に提供する。
2 退院療養計画書には,患者の退院後の療養に必要な保健医療又は福祉サービスに関する事項が記載されている。
3 入院診療計画書には,リハビリテーションに関する事項は含まれていない。
4 医療に係る安全管理のための委員会の開催は,無床診療所にも義務づけられている。
5 医療計画における医療の確保に必要な事業の中に,災害時における医療は含まれていない。
問題づくりが下手な問題です。
知識なしでも消去できそうな選択肢が含まれる問題は,試験委員の作問技術が低いために発生します。
受験者に考えさせて,その結果として正解できる問題であるのが国試問題として適切ですが,深く考えなくても消去できる文章になってしまうと,受験者が考えないで消去できてしまいます。
この問題では,どの選択肢がそれにあたっているか,予測できますか?
それでは解説です。
1 市町村は,医療機関に関する医療機能情報を集約し住民に提供する。
この問題で最も迷う選択肢かもしれません。
しかし,医療法では,市町村が主体となって行う事務は一つもありません。
市町村の役割として唯一あるのは,都道府県から求めがあった場合,都道府県に対して情報を提供することです。
医療機関に関する医療機能情報を集約し住民に提供するのは,都道府県の役割です。
現在は,村内に一つも医療機関がないといういわゆる「無医村」はおそらくないように思いますが,しかし無医村でなくても,医療機関がたった一つという村は多いでしょう。
そう考えると,医療計画は都道府県が策定しますが,市町村にその役割がない理由が理解できそうです。
2 退院療養計画書には,患者の退院後の療養に必要な保健医療又は福祉サービスに関する事項が記載されている。
これが正解です。
退院療養計画書には,患者の退院後の療養に必要な保健医療又は福祉サービスに関する事項が記載されるものです。
しかし,知識なしでも「退院療養計画書」という名称から,その内容を推測できそうです。
3 入院診療計画書には,リハビリテーションに関する事項は含まれていない。
本当にリハビリテーションに関する事項に含まれないのなら,出題する意味がないように思いませんか?
試験委員なら,知っておいてもらいたいのは,含まれないものではなく,含まれるものではないでしょうか。
ということで,入院診療計画書には,リハビリテーションに関する事項は含まれています。
4 医療に係る安全管理のための委員会の開催は,無床診療所にも義務づけられている。
この文章が正しければ,
医療機関には,医療に係る安全管理のための委員会の開催が義務づけられている。
で良いはずです。
医療に係る安全管理のための委員会の開催が義務づけられているのは,入院施設のある医療機関,つまり病院と有床診療所だということになります。
5 医療計画における医療の確保に必要な事業の中に,災害時における医療は含まれていない。
医療計画における医療の確保に必要な事業に含むものとして規定されているのは,以下の項目です。
・救急医療
・災害時における医療
・へき地の医療
・周産期医療
・小児医療(小児救急医療を含む。)
この選択肢も選択肢3と同じように,「含まれていない」というものになっています。
災害時における医療は,医療計画における医療の確保に必要な事業に含まれます。
〈今日の一言〉
第28回国試は,近年では最も作問技術の低い問題が多く出題された年です。
その反省があるためか,それ以降は,考えなくても消去できるような問題の出題が避けられるようになりました。
しかし,また最近では,またまた今日の問題のような問題が出題されるようになってきました。
とは,言っても問題慣れしていない人は,そういったラッキーな問題であるにも,そんなことに気が付かず,問題を懸命になって読んでしまいます。
そうならないように,問題を読むときは落ち着いて,一歩引いて問題を俯瞰するような気持の余裕を持ちたいものです。