システム理論
よくわからない人にとっては,システムという文字を見ただけでいやになってしまうかもしれません。
なぜなら,システムには「機械的」というイメージがあるからです。
システムをそのようにとらえる人がいることが,国試にとって有難いことです。
間違いやすいからです。
さて,システムとはどういう意味か,説明できますか?
システムは,システムの構成要素が周りの環境とともに絶えず変化していくものだととらえると良いと思います。
これを交互作用といいます。
家族システムの場合,構成要素とは,家族メンバー個々のことです。
環境とは,ほかの家族メンバーであり,学校であったり,友達であったり,地域社会であったり,周りを取り巻いて影響を与えるもの,などさまざまなものがあるでしょう。
人は絶えず変化するものです。
個人は,環境に影響を及ぼし,環境から影響を受けます。
これがシステム理論の基本です。
恋人が心変わりするのは,恋人自身が変わることもあると思いますが,あなた自身が変わることで,恋人が変わるということもあります。
これもシステム理論の基本的な考え方の応用です。あなたも環境です。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題99 システム理論に基づく相談援助の対象に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 クライエント・システムの単位は,小集団に限られる。
2 人と環境との全体的視座から把握される。
3 家族への対応は,援助の全過程で,問題の原因となる構成員に焦点化される。
4 実践者の志向するケースワークなどの特定の方法によって把握される。
5 相談援助の対象としての個人は,システム概念から除外される。
システム理論がわからないと,クライエント・システムって何??????
と考えるのもいやになるでしょう。
クライエント・システムとは,クライエントとそれを取り巻く環境が絶えず影響を与え合う(交互作用)ものを指しています。
これだけ言えば,答えはわかるでしょう。
2 人と環境との全体的視座から把握される。
これ以外の選択肢とは明らかに異なっているがわかりますか?
1 クライエント・システムの単位は,小集団に限られる。
3 家族への対応は,援助の全過程で,問題の原因となる構成員に焦点化される。
4 実践者の志向するケースワークなどの特定の方法によって把握される。
5 相談援助の対象としての個人は,システム概念から除外される。
簡単に解説します。
1 クライエント・システムの単位は,小集団に限られる。
選択肢1は,クライエントが影響を受け,影響を与えているのは,さまざまな段階があり,小集団に限られるものではありません。
3 家族への対応は,援助の全過程で,問題の原因となる構成員に焦点化される。
選択肢3は,システム理論が出題されるときによく使われるものです。
問題の原因となる構成員のことをIPといいます。
システム理論ではIPに焦点化することよりも,むしろ家族など周辺の人に働きかけることが主流です。
4 実践者の志向するケースワークなどの特定の方法によって把握される。
選択肢4は,絶対にあり得ません。この選択肢を選んだ人は,有無を言わせず不合格にしても良いくらいの問題です。
なぜなら,クライエントに視点が当たっていないからです。
5 相談援助の対象としての個人は,システム概念から除外される。
選択肢5は,クライエント自身,つまり個人はシステムの構成要素なので,除外されることは絶対にありません。
<今日の一言>
システム理論は,ソーシャルワークにとって,極めて重要です。
今日の問題は,システム理論というものが理解できていれば,正解選択肢以外は,笑っちゃうくらいのでたらめなものでしょう。
しかし,勉強不足の人は,確実に正解することができません。
相談援助の理論と方法は,事例が多いので得点できないためなのか,ほかの科目ほど勉強しない傾向があるようです。
社会福祉士の国家試験の問題自体はそれほど難しくはないですが,勉強不足の人が簡単に合格できるほど簡単ではありません。
学習戦略を間違わないようにしたいものです。