2021年1月14日木曜日

調査票の配布と記入方法

今回は,調査票の配布と記入について学びます。

 

まずは,調査票への記入方法を確認します。

 

調査対象者が記入するのは,「自計式(自記式)」です。

調査者が記入するのは,「他計式(他記式)」です。

 

このようになっているのは,調査対象者が主体だからなのでしょう。

 

調査者から見ると,自分が記入するから「自計式(自記式)」だと思いがちですが,そうではないところが注意ポイントとなります。

 

調査対象者が,自分で自分のことを記入するから「自計式(自記式)」です。

 

それでは,整理します。

 

調査方法

内容

記入

経費

郵送調査

調査票を郵送するもの。

自計式

安い

留置調査

調査員が訪問して調査票を配布するもの。

自計式

高い

個別面接調査

調査員が訪問して,面接するもの。

他計式

高い

電話調査

調査員が電話で聞き取るもの。

他計式

安い

 

経費のことを整理してみました。

勉強不足の人は,「個別面接調査が最も安く済む」と思うかもしれません。確かに対象数が少なく,徒歩で行ける範囲の家に訪問するだけなら,それでよいかもしれません。

 

しかし,それは質的調査の発想です。

 

量的調査の場合,ある程度の標本数が必要です。標本数が少ないと「標本誤差」が生じるからです。

 

そうすると必然的に徒歩で行けないところも出てくるでしょう。

電車で片道180円なら,往復で360円もかかってしまいます。

 

その点,郵送調査なら,送るのに84円(あるいは94円),返送に84円(あるいは94円),合計168円(あるいは188円)です。

 

電話調査は,電話代だけで済みます。

この一覧には入れていませんが,最も安く済むのは,インターネット調査です。

しかし,インターネット調査は,どんな方法をとっても,無作為調査にならないというデメリットがあります。

 

そのテーマに興味のある人だけが答えることになりますし,インターネットにアクセスできない人は対象から外れてしまいます。

 

郵送調査は手軽にできることから,多くの量的調査で実施されていますが,回収率が低いというデメリットがあります。

 

知らないところから突然送られてきた調査に答えてくれる人は,それほど多くはないからです。

 

そのため,郵送調査では,回収率を高めるための工夫が必要です。

 

すべての調査方法には,このようにメリットとデメリットがあるので,調査の目的に合うように,調査を設計することが求められるでしょう。

 

それでは,今日の問題です。

 

28回・問題84 調査方法と調査票への記入の仕方に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。

1 郵送調査,留置調査,個別面接調査,電話調査の中で,実対象数を同じとすれば,調査の実施に当たっての経費と労力が最もかかるのは,郵送調査である。

2 電話調査は,調査員が質問をしながら調査票に聴き取る自計式調査である。

3 「全国世論調査の現況(平成26年版)」(内閣府)によると,公的機関,大学,メディア,企業が実施した調査の中で最も多かったのは,留置法である。

4 訪問面接調査法では,記入要領を理解した調査員が,調査対象者との面接で聞き取った内容を調査票に記入する。

5 調査票への記入の仕方として自計式は,他計式と比べて,質問の意味を正しく理解し回答を正しく記入しやすい。

 

なかなかうまく作られた問題だと思います。

決して,高度な内容ではありませんが,正解するのは,確実な知識が求められます。

 

国家試験の理想とも言える問題だと言えます。

 

しかし,こういった問題が多いとボーダーラインが上がってしまうおそれがあるので,一定数の問題は,とんでもなく難しい問題を出題する必要があるのです。

それによって,30%の人が90点を上回る国試になります。

 

このように書くと,そんなに難しい国試なのかと,落胆する人もいるかもしれません。

しかし,基礎的な知識を確実につけることができれば,必ずボーダーラインは超えられます。

 

多少のミスがあっても,必ずボーダーラインは超えられます。

 

さて,今日の問題の正解は,選択肢4です。

 

4 訪問面接調査法では,記入要領を理解した調査員が,調査対象者との面接で聞き取った内容を調査票に記入する。

 

この一文だけを読むと「なるほどそうだ」と思うでしょう。何の変哲もないものです。

 

しかし,国家試験は,一問一答の試験ではありません。五者の中から,正解を1つ,あるいは2つ選ぶものです。

 

正解ではない選択肢がいかにも正しく見えてきます。

 

あるいは,すべてが正しくなく思えてきます。

 

人によって最後の仕上げの方法はさまざまあると思いますが,私たちチームfukufuku21は,最後の最後は,過去問で仕上げると良いと思います。

 

理由は,過去問は国家試験問題そのものだからです。

 

一問一答式のものは,過去問をばらしたものなので,過去問にきっちり取り組めば,おそらく一問一答式のものと同じ効果は得られるはずです。

 

その際,気を付けなければならないのは,正解探しだけで終わらないことです。正解ではない選択肢もしっかり読んで解くようにしましょう。

 

それでは,ほかの選択肢も確認しましょう。

 

1 郵送調査,留置調査,個別面接調査,電話調査の中で,実対象数を同じとすれば,調査の実施に当たっての経費と労力が最もかかるのは,郵送調査である。

 

経費と労力が最もかかるのは,個別面接調査です。

標本数500の調査を考えてみれば,明確になるでしょう。

 

2 電話調査は,調査員が質問をしながら調査票に書き取る自計式調査である。

 

電話調査は,調査員が電話で聴き取った内容を記入する他計式です。

 

3 「全国世論調査の現況(平成26年版)」(内閣府)によると,公的機関,大学,メディア,企業が実施した調査の中で最も多かったのは,留置法である。

 

最も多いのはどれかわからなくても,留置法が最も多いということは,絶対にないと考えられます。

 

留置法は回収率が高いですが,経費も時間もかかるからです。手軽にできるものではありません。


現在の国勢調査は,インターネットでも回答することができますが,調査票の配票と回収は基本的に留置法によって行われています。これは国だからできることです。

 

 

5 調査票への記入の仕方として自計式は,他計式と比べて,質問の意味を正しく理解し回答を正しく記入しやすい。

 

自計式(自記式)は,調査対象者が自分で記入します。

そのため,記入ミスが生じます。

 

こういったミスを「非標本誤差(測定誤差)」といいます。

 

非標本誤差(測定誤差)は,自計式でも他計式でも起きますが,減少させるなら,他計式です。

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