都道府県は,知的障害者福祉法に規定される知的障害者更生相談所を設置しなければなりません。
〈知的障害者更生相談所の業務〉 ・専門的知識と技術を必要とする相談・指導 ・医学的,心理学的,職能的な判定業務 ・市町村に対する専門的な技術的援助指導 |
業務が専門的なものであることがわかります。
このような専門的な業務は,都道府県の役割です。
市町村ではなく,都道府県が設置する意味が理解できれば,いろいろな場面に応用できます。
それでは,今日の問題です。
第34回・問題60 知的障害者福祉法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 知的障害者に対する入院形態として,医療保護入院が規定されている。
2 市町村は,知的障害者更生相談所を設けなければならないと規定されている。
3 市町村は,その設置する福祉事務所に知的障害者福祉司を置くことができると規定されている。
4 1998年(平成10年)に,精神衛生法から知的障害者福祉法に名称が変更された。
5 知的障害者に対して交付される「療育手帳」について規定されている。
決して奇をてらった問題ではありませんが,正解するのはそれほど簡単ではありません。
日本語的に消去することができる選択肢が存在しないからです。
このような問題は,受験生の知識の差が明確になるため,国家試験に向きます。
それでは,解説です。
1 知的障害者に対する入院形態として,医療保護入院が規定されている。
医療保護入院は,精神保健福祉法に規定されるもので,精神障害者が入院する際,本人の同意が得られない時に家族等の同意によって入院するものです。
精神障害者福祉法が規定する入院形態は,医療保護入院のほかに,任意入院,措置入院(緊急措置入院),応急入院があります。
本人の同意によって入院するのは,任意入院です。
家族等の同意によって入院するのは,医療保護入院です。
本人・家族等の同意が得られない時に行うのは,応急入院です。
自傷他害の恐れがある場合,精神保健指定医の診察と都道府県知事の措置によって入院するのは,措置入院(緊急措置入院)です。
2 市町村は,知的障害者更生相談所を設けなければならないと規定されている。
知的障害者更生相談所の設置義務があるのは,都道府県です。
3 市町村は,その設置する福祉事務所に知的障害者福祉司を置くことができると規定されている。
これが正解です。
知的障害者福祉司は,知的障害者更生相談所に置かなければなりません。
市町村が設置する福祉事務所には任意で置かれます。
4 1998年(平成10年)に,精神衛生法から知的障害者福祉法に名称が変更された。
1950年(昭和25年)にできた精神衛生法は,1987年(昭和62年)に精神保健法となり,さらに平成7年(1995年)に精神保健福祉法になりました。
1998年(平成10年)は,1960年(昭和35年)にできた精神薄弱者福祉法が知的障害者福祉法に改称された年です。
5 知的障害者に対して交付される「療育手帳」について規定されている。
療育手帳制度には根拠法はなく,当時の厚生省通知による制度です。