生活保護法が規定する基本原理・原則には,基準及び程度の原則がありますが,国家試験では気をつけないとミスします。
基準及び程度の原則
保護は,厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし,そのうち,その者が金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。 保護基準は,要保護者の年齢別,性別,世帯構成別,所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって,かつ,これをこえないものでなければならない。 |
アンダーラインの「こえないもの」というところが要注意ポイントです。
こえるもの
と出題されることがあるからです。
生活保護は,最低限度の生活保障なので,それを上回ることも下回ることもないように生活保護基準は設定されなければなりません。
同じように,気をつけなければならない出題には,「加算」があります。
加算とは,特別の状態にある者に最低生活より高い生活水準を保障するための特別経費を支給するものである。
特別ニーズを持つ人を対象に各種加算が設定されていますが,加算することで最低限度の生活を保障しています。そのため,この文章は誤りです。
基準及び程度の原則で「こえないものでなければならない」と規定されていることは,最低限度の生活保障のためであることを心に刻んでおいてください。
そうしないと「こえるものでなければならない」と出題されたとき,文章に引っ掛かりを感じないために正解だと思ってしまいます。
それでは,今日の問題です。
第35回・問題64 現行の生活保護法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 生活保護は,日本国憲法第21条が規定する理念に基づいて行われる。
2 生活保護が目的とする自立とは,経済的自立のみを指している。
3 能力に応じて勤労に励み,支出の節約を図り,生活の維持及び向上に努めなければ,保護を申請できない。
4 補足性の原理によって,扶養義務者のいる者は保護の受給資格を欠くとされている。
5 保護の基準は,保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって,これを超えないものでなければならない。
生活保護法が規定する基本原理・原則は,ほぼ毎回のように出題されているので,確実に正解できるように理解しておきたいです。
それでは解説です。
1 生活保護は,日本国憲法第21条が規定する理念に基づいて行われる。
第32回国試では,第26条と出題されたものが,この時は第21条と出題されました。
第21条でも第26条でもなく,日本国憲法第25条が規定する「生存権」が現行の生活保護法の根拠です。
これは,中学校でも学びます。
2 生活保護が目的とする自立とは,経済的自立のみを指している。
生活保護の自立というと,経済的自立をイメージする人が多いこともあり,このような出題は多いですが,就労できない高齢者や障害者などに自立はあり得ないことになってしまいます。
現代の自立の概念は,就労による経済的自立のほかに,社会の一員として生活できる「社会生活自立」,自分のことは自分でできる「日常生活自立」も含まれます。
これだと,経済的自立はできなくても,自立はできることになります。
3 能力に応じて勤労に励み,支出の節約を図り,生活の維持及び向上に努めなければ,保護を申請できない。
能力に応じて勤労に励み,支出の節約を図り,生活の維持及び向上に努めることは,被保護者の義務ですが,申請の際の要件ではありません。
4 補足性の原理によって,扶養義務者のいる者は保護の受給資格を欠くとされている。
補足性の原理
保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。扶養義務者による扶養が保護に優先して行われる。
補足性の原理は,扶養義務者による扶養が保護に優先して行われることであり,扶養義務者がいる者は保護しないという意味ではありません。
扶養義務者が扶養できない場合は,保護を受けることができます。
5 保護の基準は,保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって,これを超えないものでなければならない。
これが正解です。
正しく「超えないもの」となっています。
今回は,正しく出題されていますが,次に出題する時は「こえるもの」と出題される可能性が高いと思います。
基準及び程度の原則が出題されたときは,正しく「こえないもの」となっているかどうかを気をつけるようにします。