2023年5月29日月曜日

生活保護法が規定する基本原理・原則~申請保護の原則

申請保護の原則

保護は,要保護者,その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとする。

但し,要保護者が急迫した状況にあるときは,保護の申請がなくても,必要な保護を行うことができる。

 

生活保護の申請権者

要保護者,その扶養義務者又はその他の同居の親族

 

扶養義務者以外では,同居の親族が申請することができます。

 

親族であっても,同居していなければ申請権者にはならないことが注意ポイントです。

 

それでは,今日の問題です。

 

2問あります。

 

26回・問題64 生活保護法で規定されている基本原理,原則に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 保護は,個人を単位としてその要否及び程度を定めるものとされている。ただし,これによりがたいときは,世帯を単位として定めることができる。

2 生活保護法により保障される最低限度の生活は,肉体的な生存を維持する程度とされている。

3 保護の申請は,要保護者,その扶養義務者のほか,要保護者の同居の親族がすることができる。

4 保護は,都道府県知事の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし,その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度のものとされている。

5 生活保護法は,最低限度の生活を保障するとともに,社会的包摂を助長することを目的とすると定めている。

 

正解はすぐわかると思いますが,解説です。

 

1 保護は,個人を単位としてその要否及び程度を定めるものとされている。ただし,これによりがたいときは,世帯を単位として定めることができる。

 

保護は世帯を単位として行われます。

 

これによりがたいときは,個人を単位として定めることができます。

 

2 生活保護法により保障される最低限度の生活は,肉体的な生存を維持する程度とされている。

 

生活保護法は,日本国憲法第25条「生存権」(すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する)に基づきます。

 

そのため,生活保護法により保障される最低限度の生活は,健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければなりません。

 

3 保護の申請は,要保護者,その扶養義務者のほか,要保護者の同居の親族がすることができる。

 

これが正解です。

 

4 保護は,都道府県知事の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし,その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度のものとされている。

 

基準及び程度の原則

保護は,厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし,そのうち,その者が金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。

 

基準を定めるのは,厚生労働大臣です。

ここを変えて出題されることが多いことを覚えておきたいです。

 

5 生活保護法は,最低限度の生活を保障するとともに,社会的包摂を助長することを目的とすると定めている。

 

生活保護法の目的は,最低限度の生活保障と自立の助長です。

 

 

2問目です。

 

28回・問題65 生活保護法における扶養義務者に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 近年の法改正により,保護の開始の決定をしようとするときは,一定の扶養義務者に対する書面による通知を行う仕組みが導入された。

2 保護の実施機関は,家庭裁判所の審判を経ずに,直系血族及び兄弟姉妹以外の者に扶養義務を負わせることができる。

3 保護は,要保護者,その扶養義務者又はその他の親族の申請に基づいて開始される。

4 夫婦間と子の老親に対する関係は,生活保護法の規定に基づき,その他の範囲に比べて強い扶養義務が課せられている。

5 被保護者に対して扶養義務者が扶養の義務を履行しないとき,国は,その費用の全部又は一部をその扶養義務者から徴収することができる。

 

この問題は1問目よりも難しい内容となっています。

なぜなら,消去法で答えを出すタイプだからです。

 

1 近年の法改正により,保護の開始の決定をしようとするときは,一定の扶養義務者に対する書面による通知を行う仕組みが導入された。

 

これが正解です。

国家試験は,このように新しい制度をお披露目する場にもなります。一度出題すると,その後の受験者はそれを勉強するので,周知するのに効果的だからです。知っておいてもらいたいものがある時は,このような出題があることを覚えておきたいです。

 

2 保護の実施機関は,家庭裁判所の審判を経ずに,直系血族及び兄弟姉妹以外の者に扶養義務を負わせることができる。

 

扶養義務があるのは,直系血族及び兄弟姉妹以外の者と3親等以内の親族です。

 

3親等以内の親族の場合は,家庭裁判所の審判によって定めます。

 

3 保護は,要保護者,その扶養義務者又はその他の親族の申請に基づいて開始される。

 

うっかりすると正解に見えますが,親族のところに「同居の」が抜けています。

 

生活保護の申請権者

要保護者,その扶養義務者又はその他の同居の親族

 

4 夫婦間と子の老親に対する関係は,生活保護法の規定に基づき,その他の範囲に比べて強い扶養義務が課せられている。

 

夫婦間と子の老親に対する関係は,その他の範囲に比べて強い扶養義務が課せられているのは適切ですが,この規定があるのは民法です。

 

5 被保護者に対して扶養義務者が扶養の義務を履行しないとき,国は,その費用の全部又は一部をその扶養義務者から徴収することができる。

 

(費用等の徴収)

被保護者に対して民法の規定により扶養の義務を履行しなければならない者があるときは,その義務の範囲内において,保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は,その費用の全部又は一部を,その者から徴収することができる。

 

この選択肢は,以上のように,誤りポイントが2つあります。近年は,1つの選択肢には1つの誤りポイントとなっているので,珍しい問題です。

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