2023年5月14日日曜日

障害者基本法に規定される差別の禁止

 障害者基本法には「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」(第4条)という差別の禁止が規定されています。


この部分は2004年(平成16年)の改正によって規定されたものです。

障害者権利条約の批准に向けた改正だった2011年(平成23年)ではないところに注意が必要でしょう。

それでは今日の問題です。


第34回・問題61 障害者基本法に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 「障害者」とは,「身体障害,知的障害又は精神障害により,長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう」と定義されている。

2 意思疎通のための手段としての言語に手話が含まれることが明記されている。

3 都道府県は,毎年,障害者のために講じた施策の概況に関する報告書を国に提出しなければならないとされている。

4 社会モデルを踏まえた障害者の定義は,国際障害者年に向けた取組の一環として導入された。

5 障害を理由とする差別の禁止についての規定はない。


かなりの難問です。


おそらく消去法でなければ正解できなかったのではないかと思います。


消去法は,一つでも消去できないものがあると正解できません。


この問題の正解は,選択肢2です。


2 意思疎通のための手段としての言語に手話が含まれることが明記されている。


確かに調べてみると,


(地域社会における共生等)


第3条の3

全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること。


と規定されていますが,ここまでしっかり覚えている人は多くはないでしょう。


そのために,ほかのものを消去することになります。


それではそのほかの解説です。


1 「障害者」とは,「身体障害,知的障害又は精神障害により,長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう」と定義されている。


一読すると正解に思えてしまうかもしれない危険な選択肢です。


しかし,定義は確実に覚えておきたいです。


この定義は,2011年(平成23年)改正の前のものです。


2011年改正は,障害者権利条約を批准するためのもので,定義に社会的障壁を加えたこと,合理的配慮を規定したことがポイントとなっています。


現在の障害者の定義

身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。


社会的障壁が加わっているところに注目です。


3 都道府県は,毎年,障害者のために講じた施策の概況に関する報告書を国に提出しなければならないとされている。


毎年報告しなければならないのは,政府です。政府は毎年国会に報告書を提出しなければなりません。


都道府県と市町村は,障害者計画を策定した際,議会に報告することが規定されています。


4 社会モデルを踏まえた障害者の定義は,国際障害者年に向けた取組の一環として導入された。


社会モデルを踏まえた障害者の定義とは,「社会的障壁」のことです。


つまり,障害者権利条約の批准に向けた2011年改正の時のことです。


5 障害を理由とする差別の禁止についての規定はない。


障害を理由とする差別の禁止は,2004年(平成16年)の改正で規定されました。

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