発達障害者支援法は,2004年(平成16年)にできたものです。
障害者の歴史の中では比較的新しいものですが,それでもかなり長くなってきています。
発達障害は,周りの人に理解されることが難しく,かつては,環境,つまり育て方によるものだと思われていた時代もあります。
この法律では,発達障害を定義したことに大きな意義があります。
「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。
重要なのは,「脳機能の障害」であると明記したことです。
「発達障害者」
発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるもの。
社会的障壁は,障害者権利条約の批准を受けて,後から加えられたものです。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題60 発達障害者支援法の規定に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 市町村は,個々の発達障害者の特性に応じた適切な就労の機会の確保,就労定着のための支援に努めなければならない。
2 都道府県は,支援体制の課題を共有するとともに,関係者の連携の緊密化を図るため,発達障害者支援地域協議会を設置しなければならない。
3 発達障害者とは,発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるものをいう。
4 都道府県知事は,発達障害者に対する専門的な就労の支援等を障害者就業・生活支援センターに行わせることができる。
5 都道府県知事は,該当する者に精神障害者保健福祉手帳を交付する。
なかなかの難問です。知識不足の人でも消去できる選択肢は一つもありません。
それでは解説です。
1 市町村は,個々の発達障害者の特性に応じた適切な就労の機会の確保,就労定着のための支援に努めなければならない。
「個々の発達障害者の特性に応じた適切な就労の機会の確保,就労定着のための支援に努めなければならない」と規定されているのは,国及び都道府県です。
早速の難問です。
2 都道府県は,支援体制の課題を共有するとともに,関係者の連携の緊密化を図るため,発達障害者支援地域協議会を設置しなければならない。
発達障害者支援地域協議会は,任意で設置されます。
「●●協議会」の多くは,任意で設置されます。「●●協議会」の設置が義務だと出題された場合は誤りだろうと思うと良いです。
3 発達障害者とは,発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるものをいう。
これが正解です。
発達障害に限らず,定義は確実に覚えておきたいです。
前説のように「社会的障壁」は,障害者権利条約の批准を受けて加わえられたものです。
4 都道府県知事は,発達障害者に対する専門的な就労の支援等を障害者就業・生活支援センターに行わせることができる。
障害者就業・生活支援センターは,障害者雇用促進法に規定されるものです。
都道府県知事が発達障害者に対する専門的な就労の支援等を行わせることができるのは,発達障害者支援法が規定する発達障害者支援センターです。
5 都道府県知事は,該当する者に精神障害者保健福祉手帳を交付する。
精神障害者保健福祉手帳の根拠法は,精神保健福祉法です。
ものすごい引っ掛けです。