障害者に交付される手帳には,身体障害者に交付される「身体障害者手帳」,知的障害者に交付される「療育手帳」,精神障害者に交付される「精神障害者保健福祉手帳」があります。
身体障害者手帳は,身体障害者福祉法に基づくものです。
精神障害者保健福祉手帳は,精神保健福祉法に基づくものです。
それでは,療育手帳は,何に基づいているものでしょうか?
知的障害者福祉法に基づいていると思った人は,残念でした。
療育手帳には,法的根拠はありません。
当時の厚生省の通知が根拠となっています。
知的障害者福祉法は,知的障害者の定義もしていません。
定義することが難しいためです。
国家試験ではこういったところに引っ掛けられてしまわないようにしたいものです。
それでは,今日の問題です。
第31回・問題62 身体障害者福祉法,知的障害者福祉法及び「精神保健福祉法」に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 身体障害者福祉法では,身体障害者更生相談所の業務として,必要に応じて「障害者総合支援法」に規定する補装具の処方を行うことが規定されている。
2 身体障害者福祉法において,身体障害者手帳の有効期限は2年間と規定されている。
3 知的障害者福祉法において,療育手帳の交付が規定されている。
4 知的障害者福祉法において,知的障害者更生相談所には,社会福祉主事を置かなければならないと規定されている。
5 「精神保健福祉法」において,発達障害者支援センターの運営について規定されている。
なかなかの難問です。知識ゼロの人が正解するのはかなり難しい問題です。
それでは,解説です。
1 身体障害者福祉法では,身体障害者更生相談所の業務として,必要に応じて「障害者総合支援法」に規定する補装具の処方を行うことが規定されている。
これが正解です。
都道府県が設置する身体障害者更生相談所は,身体障害者に関する専門機関です。
主に以下の業務を行います。
〈身体障害者更生相談所の業務〉 ・専門的知識と技術を必要とする相談・指導 ・医学的,心理学的,職能的な判定業務 ・補装具の処方および適合判定 ・市町村に対する専門的な技術的援助指導 |
このほかには,必要に応じて巡回して上記の業務を行うことができることが規定されています。
身体障害者更生相談所は都道府県が設置するため,障害者にとって距離が遠く,来所するのが困難なためです。
2 身体障害者福祉法において,身体障害者手帳の有効期限は2年間と規定されている。
障害者は障害が固定することで障害者となります。
身体障害の場合は,状態が急激に変化することはあまりないために身体障害者手帳の有効期限は設けられていません。状態が変化したときに改めて申請します。
2年間の有効期限が設けられているのは,精神障害者保健福祉手帳です。
身体障害者と異なり,精神障害者の症状は固定していません。精神疾患患者であり,精神障害者であることが特徴です。例えば統合失調症では,抗精神病薬をきっちり服用することで症状が治まり(寛解状態),疾患が障害状態になります。
3 知的障害者福祉法において,療育手帳の交付が規定されている。
ようやく今日のテーマが登場しました。
療育手帳には法的根拠がありません。
4 知的障害者福祉法において,知的障害者更生相談所には,社会福祉主事を置かなければならないと規定されている。
知的障害者更生相談所に置かなければならないのは,知的障害者福祉司です。
社会福祉主事を置かなければならないのは,福祉事務所です。
福祉事務所の査察指導員と現業員は,社会福祉主事でなければなりません。
5 「精神保健福祉法」において,発達障害者支援センターの運営について規定されている。
発達障害者支援センターは,知的障害者福祉法が規定している施設です。
都道府県が任意で設置します。
施設名(発達障害者支援センター)に「発達」が入っているため,うっかりすると児童福祉法が根拠法に思えるので注意が必要です(児童福祉法には,児童発達支援がある)。