障害者総合支援法の実施主体は市町村です。
規模や性質の面で市町村が行うのには向かないものは,都道府県が担います。
市町村と都道府県のこの関係は,障害者総合支援法以外も同様です。
地域生活支援事業は,基本的に市町村が実施しますが,市町村が行うには向かないものは,都道府県が実施します。
市町村が行うのに向かないものには,専門職の研修事業,専門性の高い事業が挙げられます。
障害支援区分認定も本来は市町村が行うには向かないものです。認定を行うことができる専門知識をもつ職員を抱えることが困難な市町村,特に規模の小さい町村があるからです。
障害者支援区分認定の流れを簡単に説明します。
認定調査は,市町村職員が行います。ただし,指定一般相談支援事業者等に委託して実施することもできます。
認定調査のポイントとして,過去に出題されたものとして,
「できない状況」に基づき判断して認定調査項目の記載を行う。
というものがありました。改めて考えてみると,当然のように思いますが,出題されるとかなりびっくりします。
当然と思うのは,障害支援区分認定は,どのくらいの支援が必要なのかを明らかにするためのものなので,「できる状況」にスポットを当てても状況が明らかとならないためです。
認定調査の結果は,コンピュータを使って一次判定を行います。
市町村に設置される専門家による合議体である市町村審査会が一次判定の結果を検討して,二次判定を行います。
二次判定の結果から,市町村が認定を行います。
二次判定の仕組みも市町村が無理なく,障害支援区分認定を行うための工夫です。
専門知識をもつ職員を抱えることが困難な市町村のために,専門職集団である市町村審議会がバックアップする仕組みです。
実によく考えられているように思いませんか。
現場サイドから見ると,国はいろいろ困難なものを押し付けてくると感じるかもしれません。
しかし,国は無理難題を押し付けているわけではなく,国民の理解が得られ,地方公共団体ができるだけ無理なく実施できるにはどんな方法がよいのかを常に考えて制度を作ります。
たまには,そうではないものもありますが,それは現場の意見を伺いながら修正を加えていくことになります。
それでは今日の問題です。
第32回・問題59 「障害者総合支援法」に定められている市町村の役割などに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 障害支援区分の認定のための調査を,指定一般相談支援事業者等に委託することができる。
2 障害支援区分の認定に関する審査判定業務を行わせるため,協議会を設置する。
3 市町村障害福祉計画を策定するよう努めなければならない。
4 指定障害福祉サービス事業者の指定を行う。
5 高次脳機能障害に対する支援普及事業などの特に専門性の高い相談支援事業を行う。
とても良い問題だと思います。知識不足では5分の1以上の確率で正解することは困難だからです。
それでは解説です。
1 障害支援区分の認定のための調査を,指定一般相談支援事業者等に委託することができる。
これが正解です。
市町村が無理なく,障害支援区分認定を実施することができるようにするための工夫の一つです。
2 障害支援区分の認定に関する審査判定業務を行わせるため,協議会を設置する。
障害支援区分の認定に関する審査判定業務を行うのは,市町村審査会です。
これも市町村が無理なく,障害支援区分認定を実施することができるようにするための工夫の一つです。
もし,市町村審査会という仕組みがなければ,市町村が判定するための専門職員を抱えなければなりません。
市町村審査会があるおかげで,必要な時だけ専門職員の知識を借りて,障害支援区分認定を行うことができます。
3 市町村障害福祉計画を策定するよう努めなければならない。
障害者に関する計画には,障害者計画(障害者基本法),障害福祉計画(障害者総合支援法),障害児福祉計画(児童福祉法)がありますが,これらの策定は,すべて義務です。
障害福祉計画と障害児福祉計画は,一体のものとして策定することができます。
4 指定障害福祉サービス事業者の指定を行う。
指定障害福祉サービス事業者の指定は,都道府県の役割です。
障害者総合支援法に規定されるもののうち,市町村が事業者の指定を行うのは,指定特定相談支援事業者のみです。
5 高次脳機能障害に対する支援普及事業などの特に専門性の高い相談支援事業を行う。
これが今日のテーマ一つの「地域生活支援事業」に関する出題です。
介護保険法では,地域支援事業に関して都道府県が実施するものはありません。
しかし,障害者総合支援法では,市町村だけではなく,都道府県が実施するものもあります。
都道府県が行う地域生活支援事業は,専門職の研修事業,専門性の高い事業などです。