今回も生活保護法が規定する基本原理・原則を取り上げます。
まずは,復習です。
https://fukufuku21.blogspot.com/2023/05/blog-post_26.html
現生活保護法の特徴はいくつもありますが,そのうち,「無差別平等の原理」はとても重要です。
旧生活保護法でも「無差別平等」は示されましたが,「原理」ではなく,「原則」であるため,実際には,欠格条項がありました。
現在の生活保護法は,日本国憲法第25条が規定する「生存権」を保障するための制度であり,欠格条項は一切ありません。
それでは今日の問題です。
第33回・問題64 生活保護法が規定する基本原理・原則に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 すべて国民は,この法律及び地方公共団体の条例の定める要件を満たす限り,この法律による保護を受けることができる。
2 必要即応の原則とは,要保護者の需要を基とし,そのうち,その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において保護を行うことをいう。
3 民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は,すべてこの法律による保護に優先して行われる。
4 保護の決定は,生活困窮に陥った原因に基づいて定められている。
5 行政庁が保護の必要な者に対して,職権で保護を行うのが原則とされている。
「原理」と「原則」の違いは,「原理」は例外がないものであるのに対し,「原則」は例外があることです。
それでは解説です。
1 すべて国民は,この法律及び地方公共団体の条例の定める要件を満たす限り,この法律による保護を受けることができる。
この文章は,「すべて国民は,この法律及び地方公共団体の条例の定める要件を満たす限り,この法律による保護を受けることができる」
のアンダーラインの部分が余計です。
過去では,「この法律の定める要件を満たす限り」の部分をいろいろ変えて出題しています。つまりここが注意ポイントです。
2 必要即応の原則とは,要保護者の需要を基とし,そのうち,その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において保護を行うことをいう。
必要即応の原則
保護は,要保護者の年齢別,性別,健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して,有効且つ適切に行うものとする。
基準及び程度の原則
保護は,厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし,そのうち,その者が金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。
3 民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は,すべてこの法律による保護に優先して行われる。
これが正解です。
補足性の原理
保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。扶養義務者による扶養が保護に優先して行われる。
4 保護の決定は,生活困窮に陥った原因に基づいて定められている。
無差別平等の原理
困窮に陥った理由により差別を受けることなく,また信条・性別・社会的身分によって差別されることなく,保護を受けることができる。
5 行政庁が保護の必要な者に対して,職権で保護を行うのが原則とされている。
申請保護の原則
保護は,要保護者,その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとする。但し,要保護者が急迫した状況にあるときは,保護の申請がなくても,必要な保護を行うことができる。
〈今日の一言〉
生活保護法の基本原理・原則は,今日の問題のように,法の条文がそのまま出題されます。
やさしくかみ砕いて理解するのも良いですが,もともとの条文を覚えることを忘れないようにしてください。