日本の障害者福祉は,障害種別による別々の法律によってサービスが提供されてきましたが,障害者自立支援法(現障害者総合支援法)によって障害種別がなくなり,サービスが一元化されました。
今日のテーマは,身体障害者福祉法です。
障害者自立支援法ができる前は,身体障害者福祉法にもサービスが規定されていましたが,現在,この法律で最も重要なものは,身体障害の等級を定めて,身体障害者手帳を交付することだと言えるでしょう。
身体障害者が障害者総合支援法の障害福祉サービスを利用するためには,身体障害者手帳を所持していることが必要です。
身体障害者は都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けることで,身体障害者となるからです。
三障害(身体障害,知的障害,精神障害)のうち,障害福祉サービスを利用するために手帳の交付が必要なのは,身体障害のみです。
身体障害者だけ異なるのは,身体障害者福祉法の身体障害者の定義が「都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けた者」とされているためです。手帳がないと身体障害者となりません。
身体障害者手帳の交付の手続き方法は,市町村が申請窓口となり,都道府県が設置する身体障害者更生相談所が障害等級を判定して,都道府県知事が身体障害者手帳を交付します。
身体障害者更生相談所には,身体障害者福祉司が配置されます。
それでは,今日の問題です。
第35回・問題61 身体障害者福祉法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 身体障害者福祉法の目的は,「身体障害者の更生を援助し,その更生のために必要な保護を行い,もって身体障害者の福祉の増進を図ること」と規定されている。
2 身体障害者の定義は,身体障害者手帳の交付を受けたかどうかにかかわらず,別表に掲げる身体上の障害がある18歳以上の者をいうと規定されている。
3 身体障害者手帳に記載される身体障害の級別は,障害等級1級から3級までである。
4 都道府県は,身体障害者更生相談所を設置しなければならない。
5 市町村は,その設置する福祉事務所に,身体障害者福祉司を置かなければならない。
この問題を消去法で正解するのは,かなり困難です。
選択肢1がネックとなるからです。
それでは,解説です。
1 身体障害者福祉法の目的は,「身体障害者の更生を援助し,その更生のために必要な保護を行い,もって身体障害者の福祉の増進を図ること」と規定されている。
この規定は,過去のものです。
現在の目的は「身体障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するため,身体障害者を援助し,及び必要に応じて保護し,もって身体障害者の福祉の増進を図ること」と規定されています。
2 身体障害者の定義は,身体障害者手帳の交付を受けたかどうかにかかわらず,別表に掲げる身体上の障害がある18歳以上の者をいうと規定されている。
身体障害者福祉法では,身体障害者を「別表に掲げる身体上の障害がある十八歳以上の者であつて,都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいう」と規定しています。
3 身体障害者手帳に記載される身体障害の級別は,障害等級1級から3級までである。
身体障害者手帳に記載される身体障害の級別は,1級から6級までです。
別表には1級から7級までありますが,7級は単独ではなく,7級に相当する障害が複数あった場合に6級になります。
4 都道府県は,身体障害者更生相談所を設置しなければならない。
これが正解です。
身体障害者更生相談所は,都道府県が設置しなければなりません。
これを選べなければ,選択肢1でつまずくので,正解するのはかなり難しくなります。
5 市町村は,その設置する福祉事務所に,身体障害者福祉司を置かなければならない。
身体障害者福祉司を置かなければならないのは,都道府県が設置する身体障害者更生相談所です。
市町村が設置する福祉事務所には,身体障害者福祉司は任意で配置されます。