2023年5月2日火曜日

障害者総合支援法に関する審査請求先

国民は,行政処分に不満がある場合,不服を申し立てる権利を有しています。


審査請求は,訴訟と異なり,費用は必要としません。


社会福祉士の国家試験に出題されている審査請求先を整理すると以下のようになります。


〈市町村長〉

・保育所利用の処分に不服がある時


〈都道府県知事〉

・障害支援区分認定,介護給付費等に不服があるに不服がある時

・生活保護の決定に不服がある時


〈専門機関〉

・要介護認定に不服がある時  ➡ 介護保険審査会(都道府県に設置)

・国民健康保険の保険料に不服がある時  ➡ 国民健康保険審査会(都道府県に設置)


障害者総合支援法では,障害者介護給付等不服審査会が規定されていますが,設置は任意です。


都道府県知事が障害者介護給付等不服審査会に審査を行うことができます。しかし,審査請求先はあくまでも都道府県知事です。


審査請求先は,制度によって異なるのが面倒なところです。



この中で,一つだけ市町村長に対するものがあります。


保育所利用の処分に不服がある時です。


これだけ市町村長になっているのは,行政不服審査法に基づく審査請求だからです。


これ以外は,それぞれの法律によって審査請求先が決められています。


行政不服審査法では,行政処分した処分庁に上級行政庁がない場合,処分庁に審査請求することが定められています。


都道府県は,市町村の上級行政庁ではありません。


上級行政庁とは,


市町村教育委員会に対する市町村長

都道府県保健所に対する都道府県

税務署に対する国税局


といったものです。


保育所に関しては個別法がないので,市町村長が審査請求先となります。


それでは今日の問題です。


第34回・問題58 「障害者総合支援法」の実施に関わる関係機関などの役割に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 障害支援区分の認定は,市町村が行う。

2 介護給付費に関する処分に不服がある者は,市町村長に対して審査請求ができる。 

3 訓練等給付費の支給決定は,都道府県が行う。

4 自立支援給付や地域生活支援事業の円滑な実施を確保するための基本指針は,都道府県が定める。

5 国,都道府県及び市町村は,自立支援給付に係る費用をそれぞれ3分の1ずつ負担する。


なかなかの難問です。知識不足の人が簡単に正解できる問題ではありません。


この問題の正解は,選択肢1です。


1 障害支援区分の認定は,市町村が行う。


本来,障害等級の認定は,都道府県が行うものです。


障害支援区分認定と要介護認定は,市町村が行う制度となっています。


市町村がこれらを行うには,専門的な判断ができる人材が不足するおそれがあります。


そのため,障害者総合支援法では市町村審査会,介護保険法では介護認定審査会という専門家による組織によって,二次判定を行うしくみをつくっています。


この結果をもとに市町村長が認定を行います。


都道府県の場合は,身体障害者更生相談所,知的障害者更生相談所,精神保健福祉センターを設置しなければならず,障害等級を判定する専門職を抱えています。


外部の専門家の力添えがなくても障害等級を判定することができます。


ほかの選択肢も解説します。


2 介護給付費に関する処分に不服がある者は,市町村長に対して審査請求ができる。


介護給付費に関する処分に不服がある場合は,行政不服審査法ではなく,障害者総合支援法の定めによって,都道府県知事が審査請求先となります。


3 訓練等給付費の支給決定は,都道府県が行う。


障害者総合支援法の実施主体は,市町村です。

介護給付費,訓練等給付費の支給決定は市町村が行います。


4 自立支援給付や地域生活支援事業の円滑な実施を確保するための基本指針は,都道府県が定める。


基本指針を定めるのは,厚生労働大臣です。


5 国,都道府県及び市町村は,自立支援給付に係る費用をそれぞれ3分の1ずつ負担する。


費用の負担割合が3分の1ずつとなる制度はあまりありません。


一般的には,国の負担の方が大きいものです。


自立支援給付に係る費用の場合は,国:2分の1,都道府県:4分の1,市町村:4分の1となっています。


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