2023年5月18日木曜日

精神障害者保健福祉手帳

精神障害者保健福祉手帳は,精神保健法が1995年(平成7年)に精神保健福祉法に改正された際に創設されたものです。


3障害の手帳の中で最も歴史が短いのが精神障害者保健福祉手帳です。


精神障害者に対する施策は医療の分野だったものが,1993年(平成5年)の障害者基本法で精神障害者が障害者に含められ,その後,精神保健福祉法が誕生します。


それでもまだ精神障害者はほかの障害者とは別の施策の中で展開され,3障害統一のサービスを提供するようになったのは,2005年(平成17年)の障害者自立支援法からです。


ただし,障害者総合支援法の実施主体は市町村であるのに対し,精神障害者保健福祉手帳の交付などの業務は都道府県であることに注意が必要です。


精神障害者保健福祉手帳の交付を希望する場合,申請窓口は,市町村と都道府県のどちらだと思いますか?


答えは,市町村です。市町村で申請を受け付け,それを都道府県に送り,精神保健福祉センターが等級を判定して,その結果をもとに都道府県知事が手帳を交付します。


住民にとって,都道府県が申請窓口になると距離が遠くなるために不都合が出てきます。


障害者総合支援法が規定する自立支援医療の精神通院医療の支給決定も都道府県が行いますが,申請窓口は市町村です。その理由は,精神障害者保健福祉手帳と同じです。

都会に住んでいると都道府県でも市町村でも良いように思うかもしれませんが,地方,特に離島の小さな村などでは都道府県では遠すぎます。


それでは,今日の問題です。


第29回・問題60 障害者手帳に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 療育手帳は,発達障害者支援法に基づき交付される。

2 療育手帳の交付の申請は,知的障害者更生相談所長に対して行う。

3 身体障害者が「障害者総合支援法」のサービスを利用する場合には,身体障害者手帳の交付を受ける必要がある。

4 手足の麻痺や音声・言語障害のない高次脳機能障害は,身体障害者手帳の交付対象である。

5 精神障害者保健福祉手帳の更新は,5年ごとに行わなければならない。


なかなかの難問です。奇をてらったものではなく,こういった極めてスタンダートな問題であっても知識の有無は十分に問えます。


資格試験の理想的なものだと言えるでしょう。今後はこのタイプの問題が多く出題されていることになるでしょう。


それでは解説です。


1 療育手帳は,発達障害者支援法に基づき交付される。


療育手帳は,知的障害者に交付される手帳ですが,根拠法は知的障害者福祉法でもなく,発達障害者支援法でもありません。


療育手帳には根拠法がありません。


2 療育手帳の交付の申請は,知的障害者更生相談所長に対して行う。


療育手帳の申請窓口は,市町村です。

理由は前説で理解できるでしょう。


3 身体障害者が「障害者総合支援法」のサービスを利用する場合には,身体障害者手帳の交付を受ける必要がある。


これが正解です。


身体障害者は,身体障害者手帳の交付を受けることで,身体障害者となります。

実際に障害があっても,手帳がないと障害者総合支援法が規定する障害福祉サービスは利用できません。


これが身体障害者の特徴です。


知的障害者と精神障害者は,障害者手帳の交付を受けなくても障害があれば,知的障害者,精神障害者となりますが,身体障害者は,身体障害者福祉法の規定によって,手帳の交付を受けることで身体障害者となります。


4 手足の麻痺や音声・言語障害のない高次脳機能障害は,身体障害者手帳の交付対象である。


手足の麻痺や音声・言語障害のない高次脳機能障害は,身体障害ではなく精神障害です。

そのため,交付するのは精神障害者保健福祉手帳となります。


5 精神障害者保健福祉手帳の更新は,5年ごとに行わなければならない。


精神障害者保健福祉手帳の更新は,2年ごとに行います。


精神障害者の特徴は,精神障害者であり,精神病患者であることです。

例えば,統合失調症は,薬物を継続して服用することで症状が安定して,障害状態となります。


しかし,統合失調症自体が治っているわけではありません。そのため,症状は変化していきます。更新が2年と短い理由はそのためです。

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