社会福祉調査の基礎を学ぶには,統計学の知識が必要です。
その中で,名前を聞くだけで難しいと感じる筆頭は「ピアソンの積率相関係数」でしょう。
ずっと昔には,ピアソンの積率相関係数を求める公式が出題されたことがありましたが,今はそんな出題はありません。
公式を知らずとも,その仕組みがわかっていれば,表計算ソフトで計算してくれるからでしょう。
ピアソンの積率相関係数の覚え方
ピアソンの積率相関係数は,その名の通り,2つの変数の関連の強さを示すものです。
相関係数は,-1≦0≦1の間で変化します。
ゼロは相関がみられない状態です。
-1,あるいは,1に近いほど相関が強くなります。
グラフにすると,-1,あるいは,1に近いと,直線を描きます。
ゼロは相関がみられない状態で,グラフにすると円のようになり,直線になるようなものはみられません。
また,測定単位が変わっても,相関係数には影響しません。測定単位が変わるとは,ドルを円に換えるなどです。
以上を押さえたところで,今日の問題です。
第28回・問題87 ピアソンの積率相関係数に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 値は0から1の範囲の間で変動する。
2 2つの変数の因果関係を表すものである。
3 年齢と所得の相関係数は,所得が円単位でもドル単位でも同じ値になる。
4 2つの変数の間に完全な相関がある場合,散布図は円形になる。
5 2つの順序変数の関連の強さを測る指標である。
昔話をしても仕方ありませんが,公式を出題された時代を考えると,今の出題は,それよりもずっと正解しやすくなっていると思います。
それでは解説です。
1 値は0から1の範囲の間で変動する。
ピアソンの積率相関係数は,-1≦0≦1 の範囲で変動します。
2 2つの変数の因果関係を表すものである。
数字で示されるとそれは適切なように思えます。
ところが統計学は,こんなことが言えそうだという可能性を示しているにすぎません。
ピアソンの積率相関係数に限らず,相関係数は,関連がありそうなことを示すだけです。
因果関係(原因と結果の関係性)があるかまではわかりません。
3 年齢と所得の相関係数は,所得が円単位でもドル単位でも同じ値になる。
これが正解です。
4 2つの変数の間に完全な相関がある場合,散布図は円形になる。
円形を描くのは相関がある場合です。
相関がある場合は,直線になります。
5 2つの順序変数の関連の強さを測る指標である。
順序変数とは,順序尺度で得られた数値です。
ピアソンの積率相関係数は,間隔尺度,あるいは比例尺度で得られた定量的データの関連を調べるときに使います。