前回は,「社会福祉調査における信頼性と妥当性」を取り上げました。
https://fukufuku21.blogspot.com/2023/07/blog-post_9.html
調査票はとても重要なものがわかるでしょう。
一般的に実施する質問票は,標準化されたものではなく,調査者が独自で作成します。
質問票の作成の際に気をつけなければ,信頼性・妥当性の高い調査にはなりません。
今回,取り上げるのは,パーソナルな質問とインパーソナルな質問です。
パーソナルな質問は,調査対象者本人の意見を尋ねる質問です。
インパーソナルな質問は,調査対象者本人にかかわらない一般的な意見を尋ねる質問です。
国家試験では,「家事は一般的に夫婦で平等に分担すべきですか」という質問をインパーソナルな質問の例として出題しています。
家事・育児に関する意識調査で実際にありそうな質問です。
インパーソナルな質問に対しては「そう思う」と答えた人でも「あなたは夫婦で平等に負担したいと思いますか」というパーソナルな質問に対しては「そう思わない」と答える人もいるかもしれません。
パーソナルな質問とインパーソナルな質問の特徴を知ったうえで質問票を作成することが大切です。
それでは,今日の問題です。
第33回・問題88 質問紙の作成に当たっての留意点に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 一つの質問文で複数の事項を問うことは,複数の回答が同時に得られるので,質問紙の作成において望ましいと考えられている。
2 パーソナルな質問とは社会一般的な意見について尋ねる質問であり,インパーソナルな質問とは調査対象者自身の意識や行動について尋ねる質問である。
3 質問文を作成するときには,調査対象者に関心を持ってもらうために,一般的に固定的なイメージを持つステレオタイプな用語を使う必要がある。
4 社会的に望ましい結果を得るために,誘導的な質問をすることは質問紙の作成として適切である。
5 前の質問文の内容が次の質問文の回答に影響を与えないように,注意を払う必要がある。
この問題は,すべての選択肢が重要なもので構成されています。
それでは解説です。
1 一つの質問文で複数の事項を問うことは,複数の回答が同時に得られるので,質問紙の作成において望ましいと考えられている。
一つの質問に2つ以上のポイントを含んだ質問をダブルバーレル質問といいます。
質問の作成の場合にダブルバーレル質問は望ましくないものです。
2 パーソナルな質問とは社会一般的な意見について尋ねる質問であり,インパーソナルな質問とは調査対象者自身の意識や行動について尋ねる質問である。
パーソナルな質問とは,調査対象者自身の意識や行動について尋ねる質問です。
インパーソナルな質問とは,社会一般的な意見について尋ねる質問です。
3 質問文を作成するときには,調査対象者に関心を持ってもらうために,一般的に固定的なイメージを持つステレオタイプな用語を使う必要がある。
固定的なイメージを持つステレオタイプな用語とは,本来の意味以外の意味を含む用語です。
ステレオタイプな用語は使わないようにします。
4 社会的に望ましい結果を得るために,誘導的な質問をすることは質問紙の作成として適切である。
社会的に望ましい結果を得るという目的自体が不適切ですが,誘導的な質問は不適切です。
5 前の質問文の内容が次の質問文の回答に影響を与えないように,注意を払う必要がある。
これが正解です。
前の質問文の内容が次の質問文の回答に影響を与えることは,キャリーオーバー効果を述べたものですが,注意が必要です。
〈今日の一言〉
今日の問題でわかるように,質問票は適切な知識がないと,聞きたいことも聞けませんし,答えを誘導するようなこともできてしまいます。
そのため,大手新聞社が世論調査の結果を発表する際,質問紙も公表することがあります。
これによって,その調査が公平性の高い調査であることを示しています。
数字は説得力を持ちますが,結果をうのみにするのは,とても危険なことです。
また,適切な知識をもって社会福祉調査を行わないと,意図せずに誤った結果をもたらすことにもなりかねません。