社会福祉調査の方法は,量的調査と質的調査の2つに分けることができます。
量的調査は,質問紙などを使って,データを収集し,そのデータの分析を通して仮説を証明する方法です。
質的調査は,観察や面接などによって,データを収集し,調査対象を質的な特徴を知るための方法です。
プロサッカーを例に考えてみます。
日本のプロサッカー選手の特徴をつかむために多くの選手にアンケートを行い,分析するのが量的調査です。
ある日本のプロサッカー選手はどんな特徴があるのかをつかむためにインタビューを行い,分析するのが質的調査です。
さて,今日のテーマは,標本抽出(確率抽出と非確率抽出)です。
量的調査を行う場合,日本のプロサッサー選手の人数くらいなら,全員に対して調査を行うことは可能でしょう。母集団全部を調査することを全数調査といいます。
しかし,予算などの関係で,そこまでできない場合は,人数を絞って調査を行うことも検討しなければなりません。
その際に,選手を選びだすことが必要です。これを標本抽出といいます。
標本抽出は慎重に行わないと,母集団の性質とは異なる結果を招いてしまいます。
標本は,知っている選手から紹介してもらった選手とするなら,非確率抽出(有意抽出)となります。これをスノーボール・サンプリングといいます。
非確率抽出では,標本数が多くても,得られるデータに偏りが生じてしまう可能性があります。
そこで,標本抽出する際,偏りが出ないように考えられたのが確率抽出(無作為抽出)です。
いろいろな人の知恵によって,さまざまな確率抽出の方法が開発されています。
最も抽出精度が高いのは,単純無作為抽出です。
それ以外の方法は,単純無作為抽出よりも抽出精度が低くなります。
本当は単純無作為抽出法を用いたいところですが,これがとても手間のかかる方法なので,ほかの方法が考案されています。
単純無作為抽出であっても,全数調査ではないので,母集団の性質とは完全一致するわけではありません。これを標本誤差といいます。
抽出精度とは,標本誤差の大小という意味です。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題86 調査対象者の抽出に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 標本抽出方法の確率抽出と非確率抽出では,非確率抽出の方が母集団に対する代表性が高い方法である。
2 適切に抽出された標本調査であれば,標本誤差は生じない。
3 調査対象者の多段抽出は,単純無作為抽出に比べて母集団の特性を推定する精度が高い。
4 系統抽出法は,抽出台帳に一定の規則性がある場合には,抽出した標本に偏りを生じることはない。
5 スノーボール・サンプリングは,非確率抽出法の一つである。
答えはすぐわかるかもしれませんが,一応解説します。
1 標本抽出方法の確率抽出と非確率抽出では,非確率抽出の方が母集団に対する代表性が高い方法である。
母集団に対する代表性が高いのは,確率抽出(無作為抽出)です。
2 適切に抽出された標本調査であれば,標本誤差は生じない。
単純無作為抽出であっても,標本誤差は生じます。
3 調査対象者の多段抽出は,単純無作為抽出に比べて母集団の特性を推定する精度が高い。
母集団の特性を推定する精度が高いのは,単純無作為抽出です。
4 系統抽出法は,抽出台帳に一定の規則性がある場合には,抽出した標本に偏りを生じることはない。
系統抽出法とは,サンプルに番号をつけて,無作為で最初に抽出するサンプルを決めて,そのあとは,等間隔で抽出していく方法です。
そのために,抽出台帳に何らかの規則性がある場合には,抽出した標本に偏りが生じてしまうことがあります。
5 スノーボール・サンプリングは,非確率抽出法の一つである。
これが正解です。
前説で紹介したように,スノーボール・サンプリングは,非確率抽出法の一つです。