法定後見制度と任意後見制度にはいくつかの違いがありますが,その一つは,成年後見監督人及び任意後見監督人です。
成年後見監督人は,必要に応じて選任されるのに対して,任意後見監督人は必ず選任されます。
職務は次の通りです。
成年後見監督人の職務
・後見人の事務を監督すること。
・後見人が欠けた場合に,遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求すること。
・急迫の事情がある場合に,必要な処分をすること。
・後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること。
任意後見監督人の職務
・任意後見人の事務を監督すること。
・任意後見人の事務に関し,家庭裁判所に定期的に報告をすること。
※任意後見監督人は,いつでも,任意後見人に対し任意後見人の事務の報告を求め,又は任意後見人の事務若しくは本人の財産の状況を調査することができる。
・急迫の事情がある場合に、任意後見人の代理権の範囲内において、必要な処分をすること。
・任意後見人又はその代表する者と本人との利益が相反する行為について本人を代表すること。
両者に若干の違いはあるもののおおよそは同じです。
それでは,今日のテーマ「成年後見監督人及び任意後見監督人になれない者とは?」です。
なれない者のことを「欠格事由」といいます。
成年後見監督人の欠格事由
・配偶者
・直系血族
・兄弟姉妹
任意後見監督人の欠格事由
・任意後見受任者
・配偶者
・直系血族
・兄弟姉妹
任意後見受任者とは,任意後見人になる契約を受けている者のことです。
それでは,今日の問題です。
第30回・問題79 任意後見契約に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 任意後見契約は,任意後見契約の締結によって直ちに効力が生じる。
2 任意後見契約の締結は,法務局において行う必要がある。
3 任意後見契約の解除は,任意後見監督人の選任後も,公証人の認証を受けた書面によってできる。
4 任意後見人と本人との利益が相反する場合は,特別代理人を選任する必要がある。
5 任意後見人の配偶者であることは,任意後見監督人の欠格事由に該当する。
正解はすぐわかると思いますが,解説です。
1 任意後見契約は,任意後見契約の締結によって直ちに効力が生じる。
任意後見契約が有効になるのは,任意後見監督人が選任された時点です。
そのために,成年後見監督人と異なり,任意後見監督人は必ず選任されるのは,この仕組みのためです。
2 任意後見契約の締結は,法務局において行う必要がある。
任意後見契約の締結は,公証人役場で行います。
3 任意後見契約の解除は,任意後見監督人の選任後も,公証人の認証を受けた書面によってできる。
任意後見監督人の選任後に任意後見契約の解除を行う場合は,家庭裁判所の許可が必要です。
4 任意後見人と本人との利益が相反する場合は,特別代理人を選任する必要がある。
成年後見制度の場合は,成年後見監督人が選任されていなければ,特別代理人を選任する必要があります。
成年後見監督人が選任されていれば,成年後見監督人が本人を代表するので,特別代理人を選任する必要はありません。
任意後見制度の場合は,任意後見監督人は必ず選任されます。
任意後見人と本人との利益が相反する場合は任意後見監督人が本人を代表するので,特別代理人を選任する必要はありません。
5 任意後見人の配偶者であることは,任意後見監督人の欠格事由に該当する。
これが正解です。
任意後見受任者又は任意後見人の配偶者,直系血族及び兄弟姉妹は,任意後見監督人となることができません。