民法では,「成年後見人による郵便物等の管理」という規定があります。
成年後見人による郵便物等の管理
家庭裁判所は,成年後見人がその事務を行うに当たって必要があると認めるときは,成年後見人の請求により,信書の送達の事業を行う者に対し,期間を定めて,成年被後見人に宛てた郵便物等を成年後見人に配達すべき旨を嘱託することができる。 |
これは,成年後見のみに規定され,保佐,補助にはありません。
この規定ができたときに,もう一つ加わったものがあります。
成年被後見人が死亡した時点で,成年後見人に付与された代理権は当然に消滅します。
しかし,それでは困ることもあるので,成年後見人の好意によって,死亡後にも代理して行っていました。
成年被後見人の死亡後の成年後見人の権限
成年後見人は,成年被後見人が死亡した場合において,必要があるときは,成年被後見人の相続人の意思に反することが明らかなときを除き,相続人が相続財産を管理することができるに至るまで,次に掲げる行為をすることができる。 ただし,第三号に掲げる行為をするには,家庭裁判所の許可を得なければならない。 1 相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為 2 相続財産に属する債務(弁済期が到来しているものに限る。)の弁済 3 その死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為(前3号に掲げる行為を除く。) |
成年後見人は,裁判所の許可を受けずとも1と2を行うことができますが,3は家庭裁判所の許可が必要です。
それでは,今日の問題です。
第30回・問題82 次のうち,民法上,許可の取得などの家庭裁判所に対する特別な手続を必要とせずに,成年後見人が単独でできる行為として,正しいものを1つ選びなさい。
1 成年被後見人宛ての信書等の郵便物の転送
2 成年被後見人が相続人である遺産相続の放棄
3 成年被後見人の遺体の火葬に関する契約の締結
4 成年被後見人の居住用不動産の売却
5 成年被後見人のための特別代理人の選任
ものすごく難しい問題です。
正解は,選択肢2です。
2 成年被後見人が相続人である遺産相続の放棄
これが正解ですが,この時点ではまず△をつけておきます。
結果的に消去法でこの選択肢が残ります。
それではほかの選択肢を消去していきましょう!!
1 成年被後見人宛ての信書等の郵便物の転送
3 成年被後見人の遺体の火葬に関する契約の締結
この2つは,前説のように家庭裁判所の許可が必要です。
4 成年被後見人の居住用不動産の売却
これも家庭裁判所の許可が必要です。
選択肢1と3は,2016年(平成28年)の民法改正によって規定されたものです。
成年被後見人の居住用不動産の売却は,成年後見制度が創設された当初から,家庭裁判所の許可が必要なものとして規定されています。
成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可
成年後見人は,成年被後見人に代わって,その居住の用に供する建物又はその敷地について,売却,賃貸,賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには,家庭裁判所の許可を得なければならない。 |
5 成年被後見人のための特別代理人の選任
特別代理人は,成年被後見人と成年後見人の利益が相反する行為の場合,成年被後見人を代表します。
成年後見人が家庭裁判所に対して特別代理人の選任の請求を行うことで,特別代理人が選任されます。