バウンダリーとは,自分と他人との境界線を意味する心理学用語です。
バウンダリーがあいまいになると,
NOと言わなければならない場面でNOと言えない。
YESと言わなければならない場面でYESと言えない
私が思っていることは相手も同じことを思っている
自分の価値観を相手に押し付ける
など,人間関係や対人援助に弊害を生じます。
バウンダリーを明確にすることは簡単なことではありませんが,対人援助職としては大切なことでしょう。
今日の問題は,精神保健福祉士の問題です。
精神保健福祉士・第22回・問題21
U精神科病院に勤めるA精神保健福祉士は,担当患者のBさんへの支援が思うように展開できないでいた。Bさんは,障害年金と親の多額の遺産金で暮らしているが,「お金がない。生活保護を受けられないか」と何度も訴えていた。A精神保健福祉士は,Bさんが他の患者にお金を貸したり,欲しいものをすぐに買ったりして無駄遣いをしているのに生活保護を受けたいと主張することを好ましく思っていなかった。そのため,どうしてBさんが同じ主張を繰り返すのかについて,その背景に何かあるかもしれないということは気になっていたが,いつも一方的な態度をとるBさんを受け入れられず,「遺産金があるので,生活保護を申請することは難しい」と繰り返し説明していた。
次のうち,A精神保健福祉士が抱く倫理的ジレンマとして,適切なものを1つ選びなさい。
1 自己決定とパターナリズム
2 専門職的価値と個人的価値
3 バウンダリーとクライエントの利益
4 クライエントの利益と所属機関の利益
5 秘密保持とプライバシー
社会福祉士の国家試験の倫理的ジレンマに関する出題では今まで見られたことがない「バウンダリー」が出題されています。
バウンダリーが倫理的ジレンマとなるのは,バウンダリーがあいまいになる場合です。
倫理的ジレンマとしては,専門職としてはNOと言わなければならない場面で,NOと言えないといったものになります。
相反する2つの事柄の間で専門職としてのジレンマを生じるのが倫理的ジレンマです。
この事例の相反する事柄は,
A:どうしてBさんが同じ主張を繰り返すのかについて,その背景に何かあるかもしれないということは気になっていた。
B:いつも一方的な態度をとるBさんを受け入れられなかった。
AとBを事例に当てはめると
2 専門職的価値と個人的価値
となります。
どうしてBさんが同じ主張を繰り返すのかについて,その背景に何かあるかもしれないということは気になっていた。
➡ 専門職的価値
いつも一方的な態度をとるBさんを受け入れられなかった。
➡ 個人的価値
次回もバウンダリーが出題される問題を紹介したいと思います。