今回は,社会福祉調査における信頼性と妥当性です。
国家試験に出題されたことばをそのまま使って説明すると以下のようになります。
信頼性
同じ調査を再度行ったときに,どのくらい類似した結果を得ているかを意味する。
妥当性
測定しようとする概念をどのくらい正確に把握できているかを意味する。
ちょっと違う角度の違う話をします。
信頼性とは,車の速度取り締まり機が,速度違反をしている車の速度を測ったとき,実際の速度とほぼ同じデータが得られることです。
この状態を信頼性が高いといいます。
毎回,得られるデータに誤差が大きいとその速度取り締まり機は使えません。
これを信頼性が低いと言います。
妥当性を例えると,車の速度取り締まりをするのに,車の速度取り締まり機を使うことです。
これを妥当性が高いといいます。
野球のスピードガンでも測定できるかもしれませんが,高度計では得たいデータは得られません。
これを妥当性が低いといいます。
調査する時には,信頼性・妥当性ともに高い調査票を使用することの重要性がわかるでしょう。
社会福祉調査ではありませんが,介護保険の要介護認定を行う際に用いられる認定調査票は信頼性の高いものです。
しかし,完ぺきに対象者の状態を示すわけではありません。主治医の意見書を参考にして,介護認定審査会が二次判定を行います。
要介護認定の認定調査に,障害支援区分認定の際に用いる認定調査票を使って調査を行うと,対象者の状態は適切に把握することができません。妥当性が低いからです。
妥当性が低い調査は,調べたいことを調べるのには適切だとは言えません。
それでは,今日の問題です。
第35回・問題87 社会調査における測定と尺度に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
1 信頼性とは,測定しようとする概念をどのくらい正確に把握できているかを意味する。
2 妥当性とは,同じ調査を再度行ったときに,どのくらい類似した結果を得ているかを意味する。
3 順序尺度では,大小や優劣を測定できる。
4 間隔尺度の例として,身長や体重がある。
5 比例尺度の方が,間隔尺度よりも情報量が多い。
選択肢と1と2は,逆になっています。
3 順序尺度では,大小や優劣を測定できる。
これが1つめの正解です。
順序尺度は,数値の大小に意味があります。
好きな日本人歌手を3名挙げてください。
という調査では,1位,2位,3位という順位に意味があります。
しかし,意味があるのは,順位だけです。つまり数値の大小です。
データの間隔が等しい間隔尺度と異なり,順序尺度は,1位,2位,3位のそれぞれの間隔は等しくないからです。
1位の人は大好きだけれど,2位以下は3名挙げなさいということなので,名前を書いただけという人もいるでしょう。
4 間隔尺度の例として,身長や体重がある。
身長や体重は,比例尺度の例です。
間隔尺度の例は,西暦や気温です。
間隔尺度の特徴は,間隔が等しいこと,0よりも小さな数値があることです。
比例尺度には,0よりも小さな数値はありません。
なお,余談ですが,気温も絶対0度を0度にすれば,比例尺度になり得ます。
しかし,一般的に用いられるマイナスが存在する温度は,間隔尺度です。1度と2度,3度と4度の間隔は,いずれも等しくなっています。
5 比例尺度の方が,間隔尺度よりも情報量が多い。
これがもう1つの正解です。
4つの尺度のうち,情報量が最も多いのは,比例尺度です。
情報量が最も多いというのは,データの大小,間隔に加えて,比率にも意味があるという意味です。
間隔尺度である西暦を例にすると意味がわかりやすいと思います。
西暦2000年は,西暦1000年の2倍である,というのは,おかしなことです。
それに比べると,比例尺度である体重は,10キログラムは,5キログラムの2倍である,というのは,適切です。