量的調査では,アンケートなどからデータを収集します。
質的調査では,観察,面接,文書・記録などからデータを収集します。
社会福祉調査というと,量的調査のイメージが強いので,データを収集する対象は無作為抽出で行うと思う人もいると思います。しかし,質的調査の場合,データを収集する対象は,通常,非確率抽出(有意抽出)します。
それでは,今日の問題です。
第31回・問題90 質的調査の記録やデータの収集方法に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 仮説検証などに必要な数量的なデータの収集を行う。
2 調査対象者を抽出する方法として,主に無作為抽出法を用いる。
3 音声データや映像データを用いることができる。
4 手紙や日記などの私的文書は除外する。
5 面接者は,インタビューの場において相手の発言内容の一言一句を正確にメモすることに専念する。
量的調査と質的調査の違いがよくわかる問題だと思います。
問題の作り方がとても上手です。
それでは解説です。
1 仮説検証などに必要な数量的なデータの収集を行う。
仮説検証などに必要な数量的なデータの収集を行うのは,量的調査です。
2 調査対象者を抽出する方法として,主に無作為抽出法を用いる。
調査対象者を抽出する方法として,主に無作為抽出法を用いるのは,量的調査です。
3 音声データや映像データを用いることができる。
これが正解です。
質的調査では,調査対象者の了解を事前に得ることで,録音や録画などによって記録を残すことができます。
質的調査の手法は,他文化を理解し分析する文化人類学から発展してきました。古い時代のそれらの記録物は,現代に重要な情報を残してくれました。
しかし,その当時は倫理的配慮がなされることは少なく,今となってはさまざまな問題が指摘されています。
現代の研究や調査は,その反省に立って,倫理的な配慮を行って実施されなければなりません。
4 手紙や日記などの私的文書は除外する。
質的調査の分析対象となるデータは,観察,面接,文書・記録などです。
文書の中には,公的文書とともに手紙や日記などの私的文書も含まれます。
5 面接者は,インタビューの場において相手の発言内容の一言一句を正確にメモすることに専念する。
正確にメモすることは必要ですが,一言一句を正確にメモすることは困難です。
そういったデータが必要な調査だとすれば,事前に録音の承諾を得て,録音すればよいです。
今は,録音データを文字化できるソフトもあり,また文字化したデータを分析するソフト(テキストマイニング)もあります。
ただし,テキストマイニングは自動で行ってくれません。分析したい言葉は,自分で区切ることが必要です。