2018年5月26日土曜日

国試に合格する勉強法~福祉の歴史編~その20

今,なぜ歴史をずっと続けているのかと言えば,その理由は簡単です。


歴史は,多くの人が苦手としている!!


去年までは,苦手でどうしても覚えられないものは捨てても良いと考えてきました。

今も基本的にはその考え方は変わっていませんが,第30回の合格基準点を考えると,取れる問題は確実に取ることの重要性を感じています。

しかも,上位30%しか合格できないのであれば,ほかの人が苦手とする部分で差をつけたほうが良いと思います。

ということで今日も歴史を続けます。

まずは,前回の復習です。

慈善組織協会 → 貧困の原因は個人の問題 → 友愛訪問(イギリスでは地区訪問と呼ばれた) → ケースワークの源流

セツルメント → 貧困の原因は社会の問題 → 社会改良 → グループワークの源流

アメリカCOSの指導者は,リッチモンドです。ケースワークに科学的方法を取り入れて「ケースワークの母」と呼ばれています。

一方,世界最大級のセツルメントとなったハルハウスを開設したJ.アダムスは,その後女性問題や平和運動を行い,ノーベル平和賞を受賞します。

この活動の違いは,貧困をどのようにとらえていたかに発していると考えられます。

さて,今日の問題です。

第29回・問題93 慈善組織協会(COS)に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 COSは,労働者や子どもの教育文化活動,社会調査とそれに基づく社会改良を目的に設立された。
2 COSの救済は,共助の考えに基づき,社会資源を活用して人と人が支え合う支援を行った。
3 COSは,把握した全ての貧困者を救済の価値のある貧困者として救済活動を行った。
4 COSは,友愛訪問員の広い知識と社会的訓練によって友愛訪問活動の科学化を追求した。
5 COSの友愛訪問活動の実践を基に,コミュニティワーカーに共通する知識,方法が確立された。

COSを取り入れた問題です。COSとセツルメントの活動の違いを理解していると,解くのは簡単です。

さて,解説です。


1 COSは,労働者や子どもの教育文化活動,社会調査とそれに基づく社会改良を目的に設立された。

COSは,貧困の原因を個人の問題ととらえた

セツルメントは,貧困の原因を社会の問題ととらえた

社会改良を目的に設立したのは,セツルメントです。

COSは,救済の対象となる貧困者を登録して,救済の重複や不正受給の防ぐために設立されました。よって間違いです。


2 COSの救済は,共助の考えに基づき,社会資源を活用して人と人が支え合う支援を行った。

COSは,貧困の原因を個人の問題ととらえた

そのため,基本は自助です。道徳の問題だからです。

よって間違いです。

行った活動は,イギリスCOSでは地区訪問,アメリカCOSでは友愛訪問です。

どちらも名称は違いますが,活動内容は一緒の貧困者同士の相互扶助で,今流に言えば,「互助」です。


3 COSは,把握した全ての貧困者を救済の価値のある貧困者として救済活動を行った。
前回の繰り返しです。

COSは,貧困の理由を個人の問題だととらえていました。

つまり個人の道徳的な問題が貧困になると考えていました。そのため,救済の対象を「救済に値する貧民」と「救済に値しない貧民」に分けて,そのうち「救済に値する貧民」を救済の対象としました。よって間違いです。

救済に値しない貧民は,救貧法で救済しました。このようなボランタリーな活動と国の関係を「平行棒理論」と言います。

時代は大きく下がって,べヴァリッジ報告で知られるベヴァリッジは,1948に公刊した『ボランタリーアクション』では,社会が本当に豊かになるためには,国が国民の最低限度の生活を保障するだけではなく,ボランタリーな活動が欠かせないと述べています。このようなボランタリーな活動と国の協働関係は,「繰り出しばしご理論」と言います。


4 COSは,友愛訪問員の広い知識と社会的訓練によって友愛訪問活動の科学化を追求した。

これが正解です。

当初は,無給のボランティアが友愛訪問(イギリスCOSは地区訪問)を行っていましたが,そのうち有給の専門職が担っていきました。その後ケースワークを深めていきます。


5 COSの友愛訪問活動の実践を基に,コミュニティワーカーに共通する知識,方法が確立された。

COSは,ケースワークの源流です。よって間違いです。

リッチモンドは,1899年に,COSの手引書となる著書『貧しい人々への友愛訪問(Friendly Visiting Among the Poor - A Handbook for Charity Workers)』を発刊して,方法論を確立しました。

<今日の一言>

今日の問題で分かるように,

リッチモンド=ケースワークの母

バーネット夫妻=トインビーホール

J.アダムス=ハルハウス

といった知識では解けません。

「誰が何々を行った」ということよりも,それは何であるのか,の方が重要だと思います。

そういう面で,とてもよい出題がされるようになってきた印象があります。

しかし,試験委員が変わるとまた質の低い出題がされる可能性はあります。

一応,人名も覚えておきましょう。

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