そのうち,社会保障制度の発展過程を深めていきたいと思います。
本当は,ここで続けていきたいところですが,そろそろ飽きてきた人が多いみたいなので,いったんここで修了しようと思います。
古典的な福祉ニーズは,貧困です。
歴史を概観すると,
貧困をどのようにとらえ,そしてどのように解決しようとしてきたのか。
ソーシャルワークはそれに対してどのようにコミットしてきたのか。
これらを整理することが大切です。
貧困に陥る原因は,長く個人の問題だとされてきました。
それは,イギリスも日本も一緒です。
アダム・スミスは,「需要」と「供給」の関係によって価格が決まるとする「神の見えざる手」と呼んだ経済原理を提唱し,それがレッセ・フェール(自由放任)と呼ばれる古典的自由主義の正当性に根拠づけとなりました。昔習った「公民」では,「夜警国家」という言葉で言い表されていたものです。
神の見えざる手は,それはあくまでも経済原理であり,何らかの恣意があった場合は崩れます。
しかし,それに気が付くのはもっと先の話です。
古典的自由主義の時代の貧困観は,貧困に陥る理由は,個人の問題だとされてきました。
貧困救済は,民間の慈善事業が中心です。
産業革命は,生産力を持つ資本者階級と生産力は持たず,労働力を商品に変える労働者階級という社会構造を生み出しました。資本主義が発展していくと,貧困が社会問題化し,労働問題として現れます。マルクスは,資本主義と共産主義があり,共産主義がより進化したものだと考えました。
イギリスでは,ブース,ラウントリーらが貧困調査を行い,労働者の貧困を明らかにします。その後,国家が最低限度の生活を保障するという考え方が生まれてきます。
日本では,1918年に起きた米騒動は,政府に貧困を社会問題として認識させることになります。
COSは,自由主義的な貧困観に基づき,活動を行い,ケースワークを発展させます。
セツルメントは,貧困を社会問題だととらえ,社会改良に取り組んでいきます。
マルクスが考えた共産主義は,ロシア革命を成し遂げたソビエト連邦として成立しました。資本主義は,福祉国家として生まれ変わって今に至ります。