2018年5月23日水曜日

国試に合格する勉強法~福祉の歴史編~その17

今年,2018年は,現在の民生委員の源流の一つである方面委員が大阪で誕生してから100年という節目の年です。

また,日本の福祉行政の転換点となった富山県の主婦を発端とした米騒動から100年です。

歴史は苦手だと思われると思う人も多いと思います。しかし決して遠い昔のことを学んでいるわけではありません。

わずか100年です。50歳の人の人生を2人分をつなげたものと同じ長さです。30歳の人の場合だと3人分です。

昨年,2017年は,民生委員のもう一つの源流の一つである済生顧問制度が岡山で誕生してから100年でした。

アメリカに目を向けると,ケースワークの母と呼ばれるリッチモンドが『社会診断』を刊行し,ハルハウスの開設者のJ.アダムスが反戦活動を始めた年です。

ロシアに目を向けると,帝政ロシアが崩壊し,世界初の共産主義国家となったソビエト連邦が誕生しています。

さて,今日の問題は方面委員制度に関する問題です。

第30回・問題31 民生委員制度に収斂(しゅうれん)されることになる戦前の方面委員等の仕組み(以下,「方面委員制度」という。)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 「方面委員制度」は,イギリスの慈善組織協会(COS)よりも早く始まっていた。
2 「方面委員制度」は,方面委員令によって創設された。
3 「方面委員制度」は,恤救規則を実施するための補助機関とされた。
4 岡山県済世願問制度に続き,大阪府で方面委員制度が設置された。
5 大阪府の方面委員制度は,河上肇を中心に立案された。

外国も分かるし,済生顧問制度,方面委員制度を組み合わせた良い作りの問題だと思います。

しかし,

国試の「少しずつ違う」の要素がないので,勉強してきた人は得点できたのではないかと思います。

このタイプの問題が多かったことが第30回国試の合格基準点を押し上げたことは,想像に難くありません。

それでは解説です。


1 「方面委員制度」は,イギリスの慈善組織協会(COS)よりも早く始まっていた。

「〇〇年に何があった」という勉強法は,ほとんど意味がありません。

その知識がなければ正解できない問題は皆無だからです。

それよりも流れをつかむことが必要です。

イギリスのロンドンでCOSが設立されたのは19世紀。方面委員制度は20世紀です。

よって間違いです。

COSは,救済を受ける人を登録して,不正受給を防止することを目的に設立されたものです。

年を詳しく言うなら,ロンドンのCOSの設立は1869年です。

その時の名称は「慈善救済組織化と乞食抑制のための協会」で,1870年に慈善組織協会と変更しています。


2 「方面委員制度」は,方面委員令によって創設された。

方面委員制度は,大阪で小河滋次郎の協力のもと,林市蔵知事が創設したものです。

方面委員令は,昭和11年のもので,方面委員制度を制度化したものです。よって間違いです。


3 「方面委員制度」は,恤救規則を実施するための補助機関とされた。

方面委員が補助機関とされたのは,救護法です。よって間違いです。


4 岡山県済世願問制度に続き,大阪府で方面委員制度が設置された。

これが正解ですね。


5 大阪府の方面委員制度は,河上肇を中心に立案された。

河上肇は,前回も出てきました。実はこれも100年の年。こんなところに出題してきたのがとてもうまいと思います。

河上肇の著書『貧乏物語』(1917)は,当時のベストセラーとなりました。

金持ちがぜいたくをやめると貧富の差をなくすことができると述べています。

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