2018年5月29日火曜日

地域共生社会~地域福祉計画策定の努力義務化



地域包括ケアシステムをより具体的に進める地域共生社会の実現するものとして,「地域共生社会」が提唱されています。

地域共生社会とは(厚生労働省)

制度・分野ごとの『縦割り』や「支え手」「受け手」という関係を超えて,地域住民や地域の多様な主体が参画し,人と人,人と資源が世代や分野を超えつながることで,住民一人ひとりの暮らしと生きがい,地域をともに創っていく社会。

これに伴い,さまざまな改革が進んでいるところです。その一つとして,平成30年の社会福祉法の改正があります。

最新の法制度の改正は,出題されない傾向にありますが,地域包括ケアシステム構築は待ったなしの状況であることもあり,地域福祉に関連するものは,いくつかは出題されてくるはずです。

平成30年社会福祉法改正ポイント

(地域住民と関係機関との連携)
 地域住民等は,地域生活課題の解決に資する支援を行う関係機関との連携等によりその解決を図るよう特に留意するものとする。

(地域福祉計画策定の努力義務化)
 地域福祉計画の策定を努力義務化し,高齢者,障害者,児童等に共通する事項を盛り込む。

特に重要なのは,地域福祉計画の策定は,これまで任意とされてきたものが,努力義務化されたことです。
これだけでも社会福祉法が施行された2000年当時と今日では大きく状況が変化していることが想像つくことでしょう。

それでは,今日の問題です。

第27回・問題36 地域福祉の担い手や組織に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 民生委員は,担当区域内のすべての住民について,その生活状態を把握しておくこととされている。
2 「福祉サービス第三者評価基準ガイドライン」では評価対象の一つに「地域との交流,地域貢献」が挙げられており,地域住民や関係機関による評価委員会の設置が例示されている。
3 内閣府によると,特定非営利活動法人のうち,活動の種類として定款に「保健,医療又は福祉の増進を図る活動」を掲げるものは,全体の過半数を占める。
4 「「絆」と社会サービスに関する調査」では,満20歳から59歳までの人のうち,自治会や町内会に「参加したいと思わない」と答えた人の割合は,ボランティア・NPOに「参加したいと思わない」と答えた人の割合よりも多いという結果が示された。
5 社会福祉法には,都道府県地域福祉支援計画の策定について,住民の意見を反映させるための措置に関する規定は設けられていない。

勉強が進んでいる人なら,「答えはこれだ!」とすぐ分かる問題かもしれません。
それは,全体に難しい選択肢を配置していますが,正解選択肢は,スタンダードなものだからです。
こういった問題が,合格する人と不合格になる人の点数に差をつけていくことになります。

さて,解説です。


1 民生委員は,担当区域内のすべての住民について,その生活状態を把握しておくこととされている。

「すべての」ではなく,「必要に応じて」です。よって間違いです。


2 「福祉サービス第三者評価基準ガイドライン」では評価対象の一つに「地域との交流,地域貢献」が挙げられており,地域住民や関係機関による評価委員会の設置が例示されている。

第三者評価の受審に関する問題は比較的頻出です。

受審義務づけされている施設:社会的養護関係施設(乳児院、児童養護施設、児童自立支援施設、児童心理治療施設、母子生活支援施設)
※3年ごとに受審して,その結果の公表が義務づけられています。

ガイドラインの内容は複雑ですが,「地域との交流,地域貢献」に例示されているのは,利用者と地域のかかわり,ボランティアの受入れなどについての項目です。地域住民や関係機関による評価委員会の設置は例示されていません。よって間違いです。


3 内閣府によると,特定非営利活動法人のうち,活動の種類として定款に「保健,医療又は福祉の増進を図る活動」を掲げるものは,全体の過半数を占める。

これが正解です。ほかの科目でも何度も出題されています。しっかり覚えましょう。

NPO法人の活動分野は20分野ありますが,そのうち,「保健,医療又は福祉の増進を図る活動」は約6割です。


4 「「絆」と社会サービスに関する調査」では,満20歳から59歳までの人のうち,自治会や町内会に「参加したいと思わない」と答えた人の割合は,ボランティア・NPOに「参加したいと思わない」と答えた人の割合よりも多いという結果が示された。

これは間違いです。おそらくNPO法人の活動分野を選択できなかった人は,これを選択肢したのではないかと思います。
調査報告は,手の打ちようがありません。こんなところまで勉強しなければならないのか,と思うかもしれません。しかし,この選択肢は,間違い選択肢をつくるための出題です。
こういったところに正解は配置されないことが多いことを覚えておきましょう。

参加したいと思わないのが多かったのは,ボランティア・NPOだったそうです。

ボランティア・NPOは,自治会・町内会よりも敷居が高いみたいです。

5 社会福祉法には,都道府県地域福祉支援計画の策定について,住民の意見を反映させるための措置に関する規定は設けられていない。

さて,注目度が急上昇中の地域福祉計画についての出題です。

市町村地域福祉計画,都道府県地域福祉支援計画ともに策定が努力義務化されています。

地域福祉計画の作成,変更については,市町村,都道府県ともに,住民の意見を反映させるための措置に関する規定が設けられています。よって間違いです。

都道府県と市町村の違いは,都道府県には,「公聴会等」が規定されていることです。市町村にはそれがありません。



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