現代社会と福祉
地域福祉の理論と方法
低所得者に対する支援と生活保護制度
相談援助の基盤と専門職
高齢者に対する支援と介護保険制度
この辺りの科目が中心です。
国試全体に占める割合は,本当に一部です。
各領域の法制度を確実に得点できれば,歴史を覚えなくても何とかなる問題数と言えます。
しかし,そこまで割り切るのは怖いです。
決して深追いする必要はありませんが,最低限のものは覚えていきたいです。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題24 20世紀前半における福祉制度の発達過程に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 スウェーデンでは自由民主党政権が誕生(1920年)し,同政権によって同国の自由主義的福祉政策の基本的な枠組みが形成されて福祉国家の基礎となった。
2 アメリカではニューディールの一環として,公的扶助,失業保険,医療保険,福祉サービスの4本柱を内容とする社会保障法(1935年)が制定された。
3 ドイツでは第二次世界大戦後の基本法において,ようやくすべての国民に「人間としての尊厳を有する生活」を保障する生存権が確定した。
4 日本では工場労働者の最低就業年齢や最長労働時間など労働者の保護を定めた工場法が,第一次世界大戦後に初めて制定された。
5 日本では1938年に厚生省が設置され,また,私設社会事業への届出義務,改善命令,監督・指示,寄付金募集,補助等を定めた社会事業法が制定されている。
スウェーデン,アメリカ,ドイツ,日本が出題されています。
難易度の高い問題です。いやだなぁ,と思う人もいるでしょう。
それでは解説です。
1 スウェーデンでは自由民主党政権が誕生(1920年)し,同政権によって同国の自由主義的福祉政策の基本的な枠組みが形成されて福祉国家の基礎となった。
スウェーデンは,エスピン-アンデルセンの分類によると,社会民主主義レジームの国にあたります。
社会民主主義レジームの特徴は,普遍主義によって供給されることが多いことです。
スウェーデンは現在でも高福祉の国としてのイメージが強いと思います。
1913年には,世界で初めてとなるすべての国民を対象とした国民年金法を成立させています。
自由民主党という政党がかつてあったかどうか分かりませんが,本格的に福祉国家の道を歩み出すのは,1920年代で,1930年代に政権を担当した社会民主党がさらに推進していきました。自由民主党ではないので間違いです。
国際的にも政党名は,政党のイデオロギーを表します。自由民主党という政党では,自由主義レジームを形成すると考えられます。
2 アメリカではニューディールの一環として,公的扶助,失業保険,医療保険,福祉サービスの4本柱を内容とする社会保障法(1935年)が制定された。
アメリカは,エスピン-アンデルセンの分類によると,自由主義レジームの国にあたります。供給は選別主義によって実施されることが多いです。
アメリカが歴史の中で登場するのは,世界で初めて社会保障法という名称をつけた法律を成立させたことです。
内容は,公的扶助,失業保険,福祉サービスの3つです。医療保険は含まれません。よって間違いです。
3 ドイツでは第二次世界大戦後の基本法において,ようやくすべての国民に「人間としての尊厳を有する生活」を保障する生存権が確定した。
ドイツは,エスピン-アンデルセンの分類によると,保守主義レジームの国にあたります。供給は貢献原則によって実施されることが多いです。
ドイツは,世界で初めて社会保険を成立させた国です。もう一つ世界で初めてなのは,1919年のワイマール憲法で生存権を規定したことです。よって間違いです。
ドイツの生存権は,日本国憲法の第25条に影響を与えたと言われています。
4 日本では工場労働者の最低就業年齢や最長労働時間など労働者の保護を定めた工場法が,第一次世界大戦後に初めて制定された。
日本は,エスピン-アンデルセンの分類では,どこにも分類されません。
日本の工場法は,日本で初めての労働者保護の法律です。意外と古くて1911年で第一次世界大戦前です。
よって間違いです。
同法は,第二次世界大戦後の労働基準法制定まで存続しました。
5 日本では1938年に厚生省が設置され,また,私設社会事業への届出義務,改善命令,監督・指示,寄付金募集,補助等を定めた社会事業法が制定されている。
これが正解です。1938年に内務省から独立して,厚生省が設置されました。