2018年5月18日金曜日

第31回国試に合格する勉強法~福祉の歴史編~その12

今日もイギリスの歴史問題を続けます。

今日の問題は,出題当時はかなり難しかったと思われます。

なぜなら,頻出のものが並んでいますが,内容はそれまでのものとは違うからです。

こういう問題が解けるかどうかが,全体の点数に大きくかかわります。

それでは問題を見ていきましょう。


第23回・問題33 イギリスのコミュニティケア,公私関係に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 ベヴァリッジ(Beveridge,W.)は,「ベヴァリッジ報告」の後,「ボランタリーアクション」を公刊し,ボランタリーセクターに対する福祉国家の優位性を強調した。
2 「シーボーム報告」を受けて,「地方自治体社会サービス法」が成立し,地方自治体において利用者ごとの分野別部局体制が強化された。
3 「バークレイ報告」を受けて,「社会サービス法」が成立し,より包括的なノーマライゼーションなどの理念に基づくコミュニティケアが推進された。
4 「グリフィス報告」を受けて,福祉施設を公的に整備するための「国民保健サービス及びコミュニティケア法」が成立した。
5 ブレア政権は,ボランタリーセクターやコミュニティの役割を重視し,政府セクターとボランタリーセクターが「コンパクト」と呼ばれる協約を結ぶ政策を展開した。

出題当時だけではなく,今見ても難しい問題です。

それでは解説です。


1 ベヴァリッジ(Beveridge,W.)は,「ベヴァリッジ報告」の後,「ボランタリーアクション」を公刊し,ボランタリーセクターに対する福祉国家の優位性を強調した。

べヴァリッジと言えば,福祉国家の基礎となったべヴァリッジ報告は有名ですが,ボランタリーアクションは,あまり知られていないと思います。

そのべヴァリッジとボランタリズムは相容れないように感じるかもしれません。その違和感からこの問題が考えられたのだと思います。

べヴァリッジは,世界初のセツルメントであるトインビーホールの運営にもかかわったことがあると言われています。そのため,ボランタリーな活動には関心があったのだと思います。

ボランタリーアクションでは,国家による保障とともに国民のボランタリーな活動が必要であることを述べています。よって間違いです。


2 「シーボーム報告」を受けて,「地方自治体社会サービス法」が成立し,地方自治体において利用者ごとの分野別部局体制が強化された。

イギリスでは,分野ごとに福祉制度が発展し,縦割りとなっていきます。そこで一元化することを提唱したのが,シーボーム報告です。よって間違いです。


3 「バークレイ報告」を受けて,「社会サービス法」が成立し,より包括的なノーマライゼーションなどの理念に基づくコミュニティケアが推進された。

社会サービス法は,イギリスの法律ではなく,1982年に施行されたスウェーデンのものです。
よって間違いです。社会サービス法は1990年代に実施されたエーデル改革の根拠法となっています。

イギリスの法律は,1970年にシーボーム報告を受けて成立した地方自治体社会サービス法です。


4 「グリフィス報告」を受けて,福祉施設を公的に整備するための「国民保健サービス及びコミュニティケア法」が成立した。

国試会場の独特の雰囲気に負けると,この選択肢を正解にしてしまいそうです。

しかし,国民保健サービス及びコミュニティケア法は,保守党のサッチャー首相の時代にできたものです。福祉施設は公的に整備することは考えられません。

同法では,福祉サービスはさまざまな主体が供給する福祉多元主義を具現化したものです。そのためにケアマネジメントが必要となっていきます。

よって間違いです。


5 ブレア政権は,ボランタリーセクターやコミュニティの役割を重視し,政府セクターとボランタリーセクターが「コンパクト」と呼ばれる協約を結ぶ政策を展開した。

これが正解です。

ブレアと言えば,「第三の道」しか出題されたことがありませんでした。結果的にこれが正解です。

コンパクトは,この前にもそのあとにも出題されたことがない一見さんです。

これを正解とするには,ほかの選択肢が消去できなければなりません。

この手の問題を正解するのは,とてつもなく難しいものです。

知っている知識だけを頼りにしていては絶対に解けないと思います。

こういった難しい問題にチャレンジすることは,得点力を上げるには欠かせないのです。

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